RECORD

Eno.220 モルドの記録

二人の時間 15

「いろんな人と闘ってきたなぁ。
 なんと、王様とも闘ったんですよ」

「まあ」

「しかもネズミの王様なのです~」

「それはもう……絵本じゃない!」

「まさに絵本の主人公みたいでした……」

「ふふ、すごい。
 本当にいろいろなひとが集まっている場所なのね」

「ね~。武器のマスターさんも、いろんなおかたがいて」

「…………もしかしたら、
 あなたはここで暮らすほうが、いいのかしら」

「……」

「だって、そうでしょう。
 外を歩いていても、嫌な目を向けられたりしない」

「そうだね。吸血鬼ってだけでは、気にされないね」

「料理も、環境も良くて、あなたのお友達だっている」

「うん」

「でもね、あの国にも、
 あなたを気にかける人はいるの。だから……」

「大丈夫だよ。マギーちゃん」

「ほら」
「これは……帰りのチケット?」

「そう。…ちゃんと帰るよ。僕がここへ来たのは、
 帰ってからの暮らしを良くするためなんだから」

「モルド……」

「それにきみだって、帰らなかったら
 グレアさんやミリィさんが寂しがっちゃうよ」

「……あの二人は、メイドだったから
 私にも良くしてくれたんだと思うけど……」

「もうっ、ちゃんと仲良しさんでしたよ~。
 帰ったら、お土産持って会いに行きましょうよっ」

「……そうね。何より、私もまた会いたいわ」

「でしょ? でもせっかくの素敵な国なんだし、
 今はまだ、のんびり過ごしていきましょうね」

「えぇ。お土産話もたっぷりつくっていきましょう」


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モルド
地元では嫌厭されがちな吸血鬼。しかし話をしていけばそれなりに
受け入れられていた。屋敷では料理長にわりと可愛がられていたが、
無愛想な人物だったのでささやかな贔屓に全く気付いていなかった。

マギー
人を遠ざけるよう振舞っていたため、学友もできず、それを当然と
思うも気にしていた。が、屋敷では歳の近いメイド(女)たちには
友人的な親しみを持たれていた。男の趣味が悪いとも思われている。