RECORD

Eno.307 ルカ&ファーディの記録

成就

もう一人分の肉体を調達してルカとファーディの二人に戻る。
叶えるには誰かに犠牲を強いるしかないと思っていた望みだ。

闘技者を含むアレーナ特区の無辜の人達の体を奪うのは言語道断。
異世界のクローンの肉体を買って使うのも色々とはばかられた。
あとは何らかの事情で魂だけ無くなってしまった人体があったら
借りさせて貰おうかと思っていた程度で、正直心情としては諦めに近くて。

……悪魔に解決して貰うなんて手法、僕たちには考えつきもしなかった。
体を生み出して魂を移し替えせるなんて、
僕たちの故郷でそう呼ばれていた存在よりずっと力も権能も強い悪魔だったんだろう。
その手段を教えて貰えたことを含めて、フラウィウスでの出会いの妙に感謝するほかない。

願いが叶ってしばらくは年甲斐も無くファーディにしがみついて。
ファーディも僕を抱き返して、お互いの存在を確かめ合った。

一番近くにいるはずなのにどこを見回してもいなかったファーディが、今は隣にいてくれる。
触れ合うことができる。笑顔を見られる。お揃いの時計をそれぞれ持っていられる。
考えるだけで胸の奥がとても温かくなる。僕はこんなに幸せでいいんだろうか。

ああ、でも、これからだ。ずっとファーディに頼っていた僕が、
対等に頑張れる機会をようやく得られた。
今までファーディが全て引き受けていた痛みを二人で分け合えるように。
そしてお互いの幸せを分かち合えるように。
もっと強く賢くあれるよう、自分を磨いていかないと。

◆◆◆

健康な人間のルカの体を『複製』して、そこにルカの魂を移す。
そうすればルカは人間に『戻る』。
……いや理屈は分かるが思いつかねェよ。すげえな、本当。

悪魔との取引だから当然対価は必要になったが、欲望ならいいってんで俺の肉体破壊欲を捧げた。
入ってる体が自分や他者に傷つけられたり殺されたりするのが快感っていう、
人間に溶け込むにはあまりに異質な精神寄生モンスターとしての欲望。

これのお陰で闘技での負傷も苦にならなかった側面はあるが、素直に受け入れたくねえ気持ちがあった。
要するに支配している肉体、他者を傷つけて悦に入る悪趣味なんだという罪悪感にも苛まれるからだ。
捧げたことで闘技の楽しみは減るだろうが、手離してよかったんだと思う。

それにしても、目下の諸問題が解決するまで一緒にいるって約束だったが
想像以上にハイスピードでルカが一人で生きられる体になっちまった。
身の振り方を考えねェとなあ、と思っていたが。

「とりあえず個室のベッドを増やそうか。もう少し広い場所に引っ越すのもいいかもしれないね」

当然のようにルカからそう言われて、
ああ、本当に一緒にいて欲しいって思って貰えてるんだとようやく実感した。
同時に心をじんわりと満たすものがあって。
ルカの幸せは当然俺の望みだったが、俺までこんなに幸せでいいのかね。