RECORD

Eno.132 フィコ・エルバの記録

夜更け


シーズン終了間際。アレーナ特区。
閑散とした雰囲気でいたここがにわかに沸いた。

レギュレーション外の武器の大量配布。
ピーキーと言うにも言葉が足りないそれらを前に、
これまで粛々と闘技をこなしていた面子までもが狂騒に耽る。

男もその一人だった。



夜も更け、丸一日続くとは言え、宴も一旦の落ち着きを見せた頃。
ふと、思い至り。何処をともなく目指して歩き回る。

路地は静かで、喫煙所とするにはだいぶと時間が遅い。
海辺まで抜ければ強い潮風が灰を攫った。
雑貨屋で数点の買い物。ついでに、荷の引取りを手配。

少ない私物のうち、残念だが持ち出せないあれやこれやも、処分は免れることだろう。

食事を摂る気分ではない。明るくなってからもう一度。と、その区画を通り過ぎ。
整備場や訓練場は、にわかに駆け込んだ闘技者たちが型を確認し合っていて。
かれらは本質的に闘技が好きなんだろうなと。当たり前のようなことを実感。

煤まみれの者たちが温浴施設に駆け込む後ろ姿を眺め、あれは不定期に上がる爆発音の被害者たちだなと。
ここの仕様にすっかり慣れてしまった己を自覚する。

ラウンジを横目に、観戦席へ。
知った顔へのあいさつ回り。イベントに沸く彼らに乗っかり、2、3話して別れとした。

併設の酒場の横を通った。そこでも矢張り、話題は共通のようで。
つい首を突っ込んでしまった。知り合いを見つけたから、というのもある。

交わした言葉は、ここでも2つか3つ。
グラスを掲げて、はじめまして。
グラスを受け取り、さようなら。 またいずれ。

外に出れば、今日は満月だったか。いいや明日だよなんて、誰かの話し声がロビーから。


一度見上げて、帰り足。


あれから幾日が過ぎたろうか。
定型文は、男が去ってからも届き続けるのか。

考えたところで答えは出ないが。



男は、男に出来ることを。