RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

日記49

ランク1だからこの程度で済んでいる。
ハメを外しがちになる。高揚感を抱いて欲求が強くなる。
一夜だけで衝動が収まる。
そこに居て、触れられたら充分。理性が飛ぶこともない。
『それだけで済んでいる』のは、きっと幸運なこと。

いつもと違うことの違和感を抱かなかった。
自分をこの人で満たして欲しいと、強い衝動に駆られて。
思考が蕩けた言動も振る舞いも、満月に酔ったような言動も。
原因の正体は分かっている。
縁がないと思っていた、獣のとある本能の1つが発露した。
たった、たったそれだけのこと。


どうして今までなかったか。
どうしてここに来て突然発露したか。

分かっている。
恋愛感情を得てしまったから。
今まではそんなものがなかったし、抱きたいとも思っていなかったから起きなかった。
これは普段抱いている欲求が強くなっているだけだから。
なかったものは、どれだけ色濃くしようとしてもそこにないのだから濃くならない。
けれど、抱いてしまったから、獣の生に振り回される。



「……レナータが、野性に振り回される自分を肯定できねぇつってた気持ち、今ならよーく分かるよ」



ため息をついて、この間のことを整理するために記録を綴って。
抱く感情が嘘ではない。好意を伝えて表現することが恥ずかしいわけではない。
ただ、『己の意志』かと問われたならば、それは『獣の本能で制御が利かなくなった』が正しいわけで。
自制が利かないことが、どうしても恥ずかしい。
今まではむしろ、闘争本能など獣のままに生きることの全てを肯定していたのだけど。

「レナータに薬もらえねぇかなぁ」



この程度の症状だと「パートナーもいますしそっちの方が絶対安パイです」と一蹴にされるのが目に見えているけれど。
帰ったら、説得を試みてみよう。





好きな満月が、好きじゃなくなりそうで。
満月が来ることが嫌になりそうで。
そのくせ、この上で楽しみにしている自分もどこかにいる。