RECORD

Eno.367 フィリア・バルナルスの記録

日記50

『死』がすぐ傍にあったいたとしても、恐ろしいとは思わなかった。
それをむやみやたらに人に振りかざす性格ではないと分かっていたから。
人が良く、人の死を良く思えない人物だったから。
だから、正体の察しがついても恐れることはなかった。

だけど、観戦席で。
確かな溝を目の当たりにして、確信した。

自分が根本から目を逸らし続けていただけなのだと理解した。

今窓に映っている者は、弱者のまま大きくなった自身だ。

世界の不要物。強くなった気でいて、その実ここでは何一つとして通用していないことに今更気付く。
自身が受け入れられないほど過激な試合があちらこちらで行われる。
あるいは『本気』の戦いが行われている。


自分は、『決闘』の類であればあるけれど。
殺し合いのような『一線を越えた』試合はやったことがない。



自身の戦い方など、スタートラインにすら立っていなくて。
その生ぬるい自分に、今まで周囲に合わせてもらっていて、庇護されていただけ。


子供の遊戯にも等しかった、のだと思えば。
悔しくて、今までその優しさに甘えてた自分が許せない。
知らずの内に、停滞していた自分の愚かさは、どうしようもない。






……挫折は、するものだ。
気が付いて、顧みて、成すべき未来が見えたならば。
後はそこに向かって努力するだけ。
それでいい。そうして強くなってきた。
ここでは、それでも他の者たちに並ぶことすらできていなかったらしいけれど。


武器を握る。逃げていた部分を見据える。
酒場での会話も思い返して。やることはもう分かっている。
死に慣れよう。それから、連闘をこなそう。

そうしてようやく、『対等』になれるのなら。
戦いに生きる者でありながら、戦いから遠ざけられないためにも。
弱者には価値などない。無価値な人間は、最終的に捨てられるから。
捨てられないために、足掻き続けろ。



大丈夫。顔は上がった。
まだまだ歩き続けられる。前向きに、頑張れる。





今の自分にはふさわしくないから。
左薬指のシルバーリングを外して、机の引き出しの中に仕舞った。













俺では、あいつを満足させられる試合はできない。
それどころか、見ることすら叶わない。