RECORD
Eno.792 ウィンデルの記録
ノートに書き綴られた一文
ホムンクルス、これは人造兵器。
捕虜にした敵兵を素体にし、敵国に送り返した後に身近なものから食い尽くしていく破壊装置。
一部の捕虜の精神を破壊してから従順な人造人間を核として埋め込み、他の捕虜に紛れ込ませる。
食人衝動に駆られたホムンクルス達は、或いは軍部の者を喰い、或いは身近な者を喰うだろう。
親しい人物の外見をした、話の通じない化け物達。
そうして齎された恐怖は、ただの帰還兵にも向けられるだろう。
そして起きるのは、同族殺し。
……“ご主人様”は、そんな計画を実行するために研究していたらしい。
まだ人造兵器の生産が完成しきっていなかったから、軍部へは伝えていなかったのだろうけれど。
僕は何番目のホムンクルスだったか、よく分からない。
生まれられなかった“兄弟”も、壊れてしまった“兄弟”もたくさんいた。
僕に年齢の近い“兄弟”たちは、僕みたいに動けるようになっていたけれど。
でも、他の“兄弟”みたいにはなれなかった。
■■■さんに僕が移植された時、彼の心がまだ生きていて。
僕はその人が生きた25年分の記憶を、断片的にだけどリンクした。
本来なら起こり得なかったこと。
だからきっと正しくは、リンクできてしまった。
人造兵器が知ってはいけない感情が存在することを知ってしまった。