RECORD

Eno.280 キアネアの記録

廃都の主

「駆けつけてみれば案の定か」
「随分と好き勝手に貪ってくれたものだ。
 もう自我が残っているのかもわかったものではないじゃないか……」

「とりあえず、」
「協会の長よ、廃都との敵対を望まないのなら私の弟子を解放してもらおう」



「何故お前が」

「動くだけの価値を、この魂には見出していないはずだ」



「思い入れという意味でなら確かに助けてやる筋合いはない」

「しかしそいつは曲がりなりにも魔法技術私が存在した証を託した存在だ。
 私が絶えた先の未来まで進んでもらわなければ、構ってやった甲斐がなくなる」

「三度の警告はない。
 協会の長よ、私の弟子を解放しないのならば廃都は協会を攻撃する」


「……外に飽きれば、生まれたここに定着するだろう。
 ほんの数百年、長くても千年程度の辛抱じゃないか」

「弟子の状況を把握したから今後は私が気を配る」
「数多の存在に向けて意識を分散させなければならないお前よりも
 ほぼ専任になれる私に託したほうがいいことは、わかるだろう?」



「……」

「俺が飲むしかないとわかっていて言っているだろう」


「一瞬でも待つのが耐え難いと、感じているのに」

「俺の内で生まれたモノがそんな理由で掻っ攫われて行くなんて、
 どれほどの苦痛を感じているかお前に理解できるか」

「後先考えずこちらから廃都に仕掛けたいくらいだ」



ストッパー『蘇芳』がいない今は、そう感じるだろうな」
「これの成長を最も楽しみにしていたのは『支配』じゃないか。
 少し落ち着けば暴走が治まれば、こいつを貪ることなんて望んでいなかったと思えるはずだ」

「まったく……何もかも間が悪すぎる」


「あぁ、そうだ」
「吸収したモノは多少返してもらわなければならない。
 『縹の結び』の元で処置を済ませて待っているので
 頭が冷えてから顔を出してくれると助かる。
 ……言っておくが姿を見せろという意味ではないから、キレるなよ」



「行かない」

「速やかに去れ」

「我を失う前に俺の前から消えてくれ。
 堪えた意味がなくなるのは御免だ」



「わかった」
「ある程度落ち着くまでは待機しなければならないから、
 気が変わったら来てくれ」

「性質を抑え、対話に応じてくれたこと、心から感謝する」
「――では、また後で」