RECORD

Eno.10 クロの記録

丸められた紙切れ

  
 宿泊所のとある一室。
 そこは、かつて軍服姿の少年が当面の間、仮宿として利用していた部屋だ。
 数日間試合を行った形跡も、施設を使用した履歴も付かなかった為、
 退去の裁定が下る事となった。

 部屋の清掃と不要物の処分が執り行われ、無人となったこの部屋の隅に、
 何故かくしゃくしゃに丸められた紙切れが転がっている――



××月〇〇日
あの日の妙な予感は当たっていた。
フラウィウスの街のはずれを歩いていると、突然もやのようなものに包まれた。
視界を遮断され、その場に立ち尽くすこと数分――本当はもう少しあったかも。
徐々にもやが晴れて、視界が鮮明になっていく。

そこに広がっていたのは、建造物が立ち並ぶ綺麗な街並みなんかではなく、
土気色で出来た家が崩れ落ち、熱風で砂埃が舞うよく見た景色。
そこがどこだか、一目見ただけで俺は確信した。

あぁ、本当に戻って来たんだな、と。