RECORD
Eno.18 マネス・ミダスの記録
対価
「ライゼニ、どういうつもりですか」
「どういうつもり? 分かるだろう、スヒジニ。
お前なら」
あの闘技の世界から、急に戻ってきたかと思えば、
青の神を――同じ神々である、シウェブをよく見ておけとの言葉。
それが、どういう意味なのかは、スヒジニとてよく理解していた。
「シウェブに限って、
そのような事はありえますまい」
「セウラニを見てみろ。
ありえない、なんて事はありえない」
「あれは、特殊な――」
「――そうだな。
ただの人間たちが、よりにもよって、
静寂なる白の不死者、グウェン・メウィン、
猛き赤の不死者、ドラガ・ガラガを封じ果たした」
無表情で、声色だけは楽し気に語る兄神。
旅を司る灰の主神、ライゼニは言葉を、その口で綴っていく。
「あれほどの例外は起こり得まい。
あの時は、セウラニもソアレラも、大変だったからな」
危うく、俺が力を振るう事になるとこだったと、
目の前の灰の神――八色の大地の長であるライゼニはそう語る。
この会話を聞くものは、今は誰もいない。
ツチノミの緑の神殿は、大樹を利用したものであった。
頑丈な巨大樹をそのままくり抜き、加工し、しなやかな樹皮などはそのまま天然の要害とも成る。
爽やかな木の香りが空気を満たし、自然と共にあるという事を思い起こされるその居城とも言うべき神殿は、
スヒジニにとって、己の愛すべき子らが与えてくれた住居であり、祭殿であり、最も心を落ち着かせられる場所であった。
ただ、今は違うのだが。
「あの二人が心を乱された時のように、
シウェブもそうなると?」
「なるさ」
「先も言いましたが――」
シウェブが、異世界の女性に入れ込むなどありえない。
アレにとっては、貢物の一つであるぐらいであろう、とスヒジニは思っていた。
あれは良くも悪くも心が分かっていない。
だから、平然と青の不死者の大切な者たちにも手を出して、己の不死者の恨みを買っていた。
それが何故。
「分かっていないな、スヒジニ」
溜息を零して、ライゼニの瞳が己を捉える。
「だからこそだ。
異世界の連中ってのは、俺は好きだがな」
見世物として、そう告げて。
「時に、信じられん事を引き起こす。
神が乱される切欠なんぞ、なんて事はないことから起こりえる」
「だから、俺が見ている」
「間違いないが無いように」
「対価が正しく払われるように」
でなければ。
「俺たちの在り方に、関わってくることだからだ。
全く、とんでもない女がいたものだ」
なあ、と笑いかけるライゼニの眼は、全く光がない、暗いままのものであった。
「どういうつもり? 分かるだろう、スヒジニ。
お前なら」
あの闘技の世界から、急に戻ってきたかと思えば、
青の神を――同じ神々である、シウェブをよく見ておけとの言葉。
それが、どういう意味なのかは、スヒジニとてよく理解していた。
「シウェブに限って、
そのような事はありえますまい」
「セウラニを見てみろ。
ありえない、なんて事はありえない」
「あれは、特殊な――」
「――そうだな。
ただの人間たちが、よりにもよって、
静寂なる白の不死者、グウェン・メウィン、
猛き赤の不死者、ドラガ・ガラガを封じ果たした」
無表情で、声色だけは楽し気に語る兄神。
旅を司る灰の主神、ライゼニは言葉を、その口で綴っていく。
「あれほどの例外は起こり得まい。
あの時は、セウラニもソアレラも、大変だったからな」
危うく、俺が力を振るう事になるとこだったと、
目の前の灰の神――八色の大地の長であるライゼニはそう語る。
この会話を聞くものは、今は誰もいない。
ツチノミの緑の神殿は、大樹を利用したものであった。
頑丈な巨大樹をそのままくり抜き、加工し、しなやかな樹皮などはそのまま天然の要害とも成る。
爽やかな木の香りが空気を満たし、自然と共にあるという事を思い起こされるその居城とも言うべき神殿は、
スヒジニにとって、己の愛すべき子らが与えてくれた住居であり、祭殿であり、最も心を落ち着かせられる場所であった。
ただ、今は違うのだが。
「あの二人が心を乱された時のように、
シウェブもそうなると?」
「なるさ」
「先も言いましたが――」
シウェブが、異世界の女性に入れ込むなどありえない。
アレにとっては、貢物の一つであるぐらいであろう、とスヒジニは思っていた。
あれは良くも悪くも心が分かっていない。
だから、平然と青の不死者の大切な者たちにも手を出して、己の不死者の恨みを買っていた。
それが何故。
「分かっていないな、スヒジニ」
溜息を零して、ライゼニの瞳が己を捉える。
「だからこそだ。
異世界の連中ってのは、俺は好きだがな」
見世物として、そう告げて。
「時に、信じられん事を引き起こす。
神が乱される切欠なんぞ、なんて事はないことから起こりえる」
「だから、俺が見ている」
「間違いないが無いように」
「対価が正しく払われるように」
でなければ。
「俺たちの在り方に、関わってくることだからだ。
全く、とんでもない女がいたものだ」
なあ、と笑いかけるライゼニの眼は、全く光がない、暗いままのものであった。