RECORD
Eno.10 クロの記録
血塗られた手帳
…………失敗した、ダメだった、ダメだった
いつから気付かれていた??どこから漏れた???どうしてバレた???
本隊が到着するまで、少なくとも数日は掛かるはずだった……はずだったのに
作戦開始の合図とともに設置した爆薬を爆発させ、煙を焚くまでは良かった
逃げる準備も万全だった。方角もしっかり確認していたのに。いたのに!!!
どうして逃げた方にあのクソ野郎が待ってるんだよ!!
日が暮れる前までは影も形もなかった。人っ子一人居なかった
傭兵どもの通信を盗み聞きした時も、まだ出発してないって話だったんだ
暗闇の中を走っていたせいで、気付くのも遅れてしまった
叫んだ時には手遅れだった
俺と同じかそれよりも若い、未熟な仲間を先に逃がしたのが良くなかった
目が慣れない、気付くのが遅れたやつから倒れていく
沢山の悲鳴が聞こえた。その全てが聞き覚えのある声だった
成す術もなく斬り伏せられ、撃たれ、捕まって、悲鳴や怒号が木霊した
どうあっても俺達だけで本隊を相手に出来るわけがなかった。突っ込むのは自殺行為だ
引き返してキャンプの傭兵共を切り抜ける方がまだ可能性はあった
出来るだけ大きな声で、周りにも聞こえる声で叫んで伝えた
切り抜けるためにも、まずは俺が一番に突っ込んで、相手取るしか無かった
その時の俺にはもう、倒れた仲間を気に掛ける余裕が何処にもなかった
今まだ信じて俺に付いて来る仲間の為にも、一人でも多く逃がすためにも
何としてでも俺が切り開くしか助かる道はないと思っていた
斬った、撃った、殴った、蹴った、突いた。出来ることは何でもした
煙で視界も悪くて、相手の得物が何だったかすらも覚えてない
とにかく何でもやった。教わった戦闘術は、何でもやった
気がつけば野太い男の声も、戦場に似つかわしくない声も、聞こえなくなっていた
あいつらは逃げる事が出来たんだろうか、それとも――
少し手間取ったが、本隊の方からは攻撃が飛んでこなかった
その間に、俺も仲間が逃げたであろう方角へと走った
正直、走れていたかも怪しい。俺もそれなりに身体は痛んでいた
……ほんと笑えるよ。こういう時に限って、あの力は出てこないんだから
とにかく走った、歩いた、這った。皆が逃げた方へ
藁にも縋る思いで、『あの噂話のする方』へ
まだ意識はある。無事じゃないけど身体は動く
動く限りは逃げないと、逃げなくちゃいけないんだ
――段々と視界にもやが掛かってきた。それに何だか息苦しい
ここまで来て、とうとう誰にも会うことが出来なかった
暗くてよく見えなかったが、周りに『人の気配』はしなかった
……みんな、もっと遠くまで逃げたのだろうか
もしかしたら、後からここを通る仲間もいるかも知れない
だからこの手帳はここに置いていく。万が一のために
『俺達はあの方角に向かった。この手帳は置いて、信じて進め』
一人でも多くの仲間が助かってること、無事であることを祈ってる
……助けられなかったみんな、見殺しにしてゴメン
===========================================================
「…………大丈夫、きっと大丈夫だ。逃げた仲間も居るはず、きっと居るはずだ」
「…………きっと、きっと居る……絶対に……」
「…………嘘でもいい。誰か、誰か居るって言ってくれ…頼む、頼むよ」
「…………お願いだ……本当に、一生に一度のお願いなんだよ」
「…………俺なんかはどうなってもいい。どうなったっていい……だから」
「…………逃げ延びて、平和に生きてくれ…無事に、幸せに……」
「…………一人でも多く…頼むよ……たの…む……」
「………………………………………………………………………………」
いつから気付かれていた??どこから漏れた???どうしてバレた???
本隊が到着するまで、少なくとも数日は掛かるはずだった……はずだったのに
作戦開始の合図とともに設置した爆薬を爆発させ、煙を焚くまでは良かった
逃げる準備も万全だった。方角もしっかり確認していたのに。いたのに!!!
どうして逃げた方にあのクソ野郎が待ってるんだよ!!
日が暮れる前までは影も形もなかった。人っ子一人居なかった
傭兵どもの通信を盗み聞きした時も、まだ出発してないって話だったんだ
暗闇の中を走っていたせいで、気付くのも遅れてしまった
叫んだ時には手遅れだった
俺と同じかそれよりも若い、未熟な仲間を先に逃がしたのが良くなかった
目が慣れない、気付くのが遅れたやつから倒れていく
沢山の悲鳴が聞こえた。その全てが聞き覚えのある声だった
成す術もなく斬り伏せられ、撃たれ、捕まって、悲鳴や怒号が木霊した
どうあっても俺達だけで本隊を相手に出来るわけがなかった。突っ込むのは自殺行為だ
引き返してキャンプの傭兵共を切り抜ける方がまだ可能性はあった
出来るだけ大きな声で、周りにも聞こえる声で叫んで伝えた
切り抜けるためにも、まずは俺が一番に突っ込んで、相手取るしか無かった
その時の俺にはもう、倒れた仲間を気に掛ける余裕が何処にもなかった
今まだ信じて俺に付いて来る仲間の為にも、一人でも多く逃がすためにも
何としてでも俺が切り開くしか助かる道はないと思っていた
斬った、撃った、殴った、蹴った、突いた。出来ることは何でもした
煙で視界も悪くて、相手の得物が何だったかすらも覚えてない
とにかく何でもやった。教わった戦闘術は、何でもやった
気がつけば野太い男の声も、戦場に似つかわしくない声も、聞こえなくなっていた
あいつらは逃げる事が出来たんだろうか、それとも――
少し手間取ったが、本隊の方からは攻撃が飛んでこなかった
その間に、俺も仲間が逃げたであろう方角へと走った
正直、走れていたかも怪しい。俺もそれなりに身体は痛んでいた
……ほんと笑えるよ。こういう時に限って、あの力は出てこないんだから
とにかく走った、歩いた、這った。皆が逃げた方へ
藁にも縋る思いで、『あの噂話のする方』へ
まだ意識はある。無事じゃないけど身体は動く
動く限りは逃げないと、逃げなくちゃいけないんだ
――段々と視界にもやが掛かってきた。それに何だか息苦しい
ここまで来て、とうとう誰にも会うことが出来なかった
暗くてよく見えなかったが、周りに『人の気配』はしなかった
……みんな、もっと遠くまで逃げたのだろうか
もしかしたら、後からここを通る仲間もいるかも知れない
だからこの手帳はここに置いていく。万が一のために
『俺達はあの方角に向かった。この手帳は置いて、信じて進め』
一人でも多くの仲間が助かってること、無事であることを祈ってる
……助けられなかったみんな、見殺しにしてゴメン
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「…………大丈夫、きっと大丈夫だ。逃げた仲間も居るはず、きっと居るはずだ」
「…………きっと、きっと居る……絶対に……」
「…………嘘でもいい。誰か、誰か居るって言ってくれ…頼む、頼むよ」
「…………お願いだ……本当に、一生に一度のお願いなんだよ」
「…………俺なんかはどうなってもいい。どうなったっていい……だから」
「…………逃げ延びて、平和に生きてくれ…無事に、幸せに……」
「…………一人でも多く…頼むよ……たの…む……」
「………………………………………………………………………………」