RECORD
Eno.451 フゥ・スコルの記録
――後で妹から聞いた話。
◇
『えっ、スコルくん海外なの!?』
ヘリオスさんはすっとんきょーな声を上げた。
「うん、かいがい。なんかおしごとがどうとか」
言われたとおりに説明する。すると猫さんのアイコンがちかちか光った。
『えー、マジで? 声優つってもまだ候補生でしょ? そんないきなり外いけるお金……あるぅ?』
アルテミスさんはふしぎがっている。
「わかんない。ハティはなーんにもしらないもん」
これはほんとのこと。ハティはなーんにもしりません。
鳥さんのアイコンが光った。
『あー、テミっちゃんはスレてんだよ、気にしないで。前に死ぬほど痛い目見てるからねー』
『黙れやクソ栗鼠。死ぬほど痛ェ黒歴史をぶちまけてやろうか、今この場で』
『ヒィ! ご勘弁を!』
言いながらも、ふたりは楽しそうにわらってる。
ハティもわらった。ほにゃり。
「えー、ハティききたいなー。ヘリオスさんのむかしばなしー」
『ちょっとハティちゃん!?』
『いぇーい! あれはそう、去年の梅雨時の話でね……』
『待って待って待ってアルテミスさんウェイウェイウェイそれはガチであかんやつだからァーッ!』
とってもとってもたのしそう。
ほにゃほにゃほにゃり。
◇
『……うーん、とはいえどうしよっか。スコルくんいないなら、次のセッションしばらく伸ばさないとだねえ』
ひとくぎりついたところでヘリオスさん。
「むー、だめ? おにいちゃんいないとだめ?」
『ダメってことはないけど……うーん、でも勝手に話が進んでたら嫌でしょ、スコルくんも。パーティー的にも彼がアタッカーだし、バランス悪くなっちゃう』
「むー」
それはそう。
ハティがヒーラーで、アルテミスさんがシーフ。
そして今いないおにいちゃんは回避モンク。
ぼうけんとしてはちょっとつまんない。ダンジョンに出る理由もなくなっちゃう。
『あ、それならいい感じに話がついたわよ』
ここでアルテミスさん。電話するからってミュートしてたけど、かえってきたみたい。
『というと?』
『ピンチヒッター呼んだ。今回のセッション限りの追加戦士みたいなノリでどうかって。二人が良ければ入ってもらうわよ』
「おおー」
『……うーん、人の追加は慎重にやりたいんだけどな。僕の知ってる人、それ?』
ヘリオスさんが慎重になる。けれどアルテミスさんは楽しそうに言った。
『このチャンネルの主』
ぺ。
『ハァッ!?』
貼られたリンクを見て、ヘリオスさんはまたすっとんきょーになった。
「わ!」
ハティもびっくりした。
むらさきの竜人さんのアバターだ。
そこにいるのはきらきらしていておじょうさまみたい、というか、おじょうさまみたいにしゃべる――
「リッドちゃまだ! えっ、リッドちゃまくるの!?」
ハティもだいすきな配信者さん!
『待て待て待て待て待て待って、そんな大物呼べるわけが、』
『大学が一緒。昨日も飲んだし、だいぶ乗り気』
『マジかうぉおィ! 待て待て待て登録者百万超えのトップ配信者相手のマスタリングとか下手なことできねーよぉ……』
『あ、でも一応プライベートだから。バラしちゃダメよ。ハティちゃんも、友達には絶対言わないでって約束してくれる?』
「いわない! ハティやくそくまもるもん!」
やったぜ! がっつぽ!
おにいちゃんめ、一人で勝手に行くからそうなるんだい!
『……え、何? ふんふん……あ、そっか。ハティちゃん、ちょっと先生呼んでくれる? 大事な話だから、先生にも約束してほしいってことで』
「せんせーも?」
『うん、お願い』
「はーい」
ふんす。
ヘッドセットを外して部屋を出る。
階段を降りると、せんせーはまだ起きていた。
「ゴローせんせー。ちょっときてー」
「…………む?」
虎人のせんせーは、筋トレしながら不思議そうに首を傾げた。
◇
「えっ、えっ、えっ、嘘でしょ!? あの億万点院サンジリッド!? 自称サブカルクソ女系お嬢様!? このやたらめったら丁寧に僕の復帰を匂わせながら去って行ったNPCにそんな魂が!? あの人こんなスキルあったの!? やだー! 僕も挨拶したいやだー!」
「だめ。ハティをほったらかして勝手に界外に行くようなおにいちゃんにあわせるリッドちゃまはいません」
つまり、身内でやってるTRPGキャンペーンの話。
正体を隠している配信者として身バレは絶対に避けないといけないから、老師にもしっかり事情を通した、ということらしい。
いつか帰ってくる世界は、かくも平和でありましたとさ。
いんたーるーど:ある日のボイスチャット
――後で妹から聞いた話。
◇
『えっ、スコルくん海外なの!?』
ヘリオスさんはすっとんきょーな声を上げた。
「うん、かいがい。なんかおしごとがどうとか」
言われたとおりに説明する。すると猫さんのアイコンがちかちか光った。
『えー、マジで? 声優つってもまだ候補生でしょ? そんないきなり外いけるお金……あるぅ?』
アルテミスさんはふしぎがっている。
「わかんない。ハティはなーんにもしらないもん」
これはほんとのこと。ハティはなーんにもしりません。
鳥さんのアイコンが光った。
『あー、テミっちゃんはスレてんだよ、気にしないで。前に死ぬほど痛い目見てるからねー』
『黙れやクソ栗鼠。死ぬほど痛ェ黒歴史をぶちまけてやろうか、今この場で』
『ヒィ! ご勘弁を!』
言いながらも、ふたりは楽しそうにわらってる。
ハティもわらった。ほにゃり。
「えー、ハティききたいなー。ヘリオスさんのむかしばなしー」
『ちょっとハティちゃん!?』
『いぇーい! あれはそう、去年の梅雨時の話でね……』
『待って待って待ってアルテミスさんウェイウェイウェイそれはガチであかんやつだからァーッ!』
とってもとってもたのしそう。
ほにゃほにゃほにゃり。
◇
『……うーん、とはいえどうしよっか。スコルくんいないなら、次のセッションしばらく伸ばさないとだねえ』
ひとくぎりついたところでヘリオスさん。
「むー、だめ? おにいちゃんいないとだめ?」
『ダメってことはないけど……うーん、でも勝手に話が進んでたら嫌でしょ、スコルくんも。パーティー的にも彼がアタッカーだし、バランス悪くなっちゃう』
「むー」
それはそう。
ハティがヒーラーで、アルテミスさんがシーフ。
そして今いないおにいちゃんは回避モンク。
ぼうけんとしてはちょっとつまんない。ダンジョンに出る理由もなくなっちゃう。
『あ、それならいい感じに話がついたわよ』
ここでアルテミスさん。電話するからってミュートしてたけど、かえってきたみたい。
『というと?』
『ピンチヒッター呼んだ。今回のセッション限りの追加戦士みたいなノリでどうかって。二人が良ければ入ってもらうわよ』
「おおー」
『……うーん、人の追加は慎重にやりたいんだけどな。僕の知ってる人、それ?』
ヘリオスさんが慎重になる。けれどアルテミスさんは楽しそうに言った。
『このチャンネルの主』
ぺ。
『ハァッ!?』
貼られたリンクを見て、ヘリオスさんはまたすっとんきょーになった。
「わ!」
ハティもびっくりした。
むらさきの竜人さんのアバターだ。
そこにいるのはきらきらしていておじょうさまみたい、というか、おじょうさまみたいにしゃべる――
「リッドちゃまだ! えっ、リッドちゃまくるの!?」
ハティもだいすきな配信者さん!
『待て待て待て待て待て待って、そんな大物呼べるわけが、』
『大学が一緒。昨日も飲んだし、だいぶ乗り気』
『マジかうぉおィ! 待て待て待て登録者百万超えのトップ配信者相手のマスタリングとか下手なことできねーよぉ……』
『あ、でも一応プライベートだから。バラしちゃダメよ。ハティちゃんも、友達には絶対言わないでって約束してくれる?』
「いわない! ハティやくそくまもるもん!」
やったぜ! がっつぽ!
おにいちゃんめ、一人で勝手に行くからそうなるんだい!
『……え、何? ふんふん……あ、そっか。ハティちゃん、ちょっと先生呼んでくれる? 大事な話だから、先生にも約束してほしいってことで』
「せんせーも?」
『うん、お願い』
「はーい」
ふんす。
ヘッドセットを外して部屋を出る。
階段を降りると、せんせーはまだ起きていた。
「ゴローせんせー。ちょっときてー」
「…………む?」
虎人のせんせーは、筋トレしながら不思議そうに首を傾げた。
◇
「えっ、えっ、えっ、嘘でしょ!? あの億万点院サンジリッド!? 自称サブカルクソ女系お嬢様!? このやたらめったら丁寧に僕の復帰を匂わせながら去って行ったNPCにそんな魂が!? あの人こんなスキルあったの!? やだー! 僕も挨拶したいやだー!」
「だめ。ハティをほったらかして勝手に界外に行くようなおにいちゃんにあわせるリッドちゃまはいません」
つまり、身内でやってるTRPGキャンペーンの話。
正体を隠している配信者として身バレは絶対に避けないといけないから、老師にもしっかり事情を通した、ということらしい。
いつか帰ってくる世界は、かくも平和でありましたとさ。