RECORD

Eno.116  の記録

心境整理

何かが。

あの時何かが、酷く私の心をざわつかせた。

いつもの酒場、いつもより少し多い人、素晴らしい詩。
この世界に来てから馴染み深い光景であり、好ましいと感じていた空間。
だというのに、何かが致命的に私と相容れなかった。

何かとは何か。
その答えを明確にする必要がある。


詩の内容……多分違う。好みとは少し外れていたが所詮は娯楽だ。躍起になるようなものじゃない、はずだ。
集った人々……違う。少しばかり見慣れない顔もあったが、酒場とはそういう場所だ。今更それは気にすることじゃない。
じゃあ、会話の内容?

異種恋愛について……否定も肯定もしない。愛故に垣根を超えて結ばれんとすることも、想い自体を大罪であると判ずることも、どちらも決して間違いじゃない。この問いに正解なんて存在しない。
神の善悪……神なんていない。分かりきったことだ。今更悩むに値しない。
吸血種について…………。


人間について。



ああ、そうか。なんで忘れていたんだろう。
三百年以上生きて死んできたからだろうか、忘れてはいけないことまで忘れてしまっていた。

私の原点。死に続ける以前。
生きているのに死人よりも死人らしかったあの頃。肌も髪も真っ白で、指一つ曲げるだけ、大きな呼吸一つするだけで死にそうな程の苦痛を味わわされた生。
人間扱いされなかったことじゃない。そんなことはどうでもよかった。私のこころにあったのは悲しみなんかじゃない。






人間であることがそんなにも偉いのか。  憎悪 






「ふう、すっきりしました。また忘れてしまわないようにしませんと」