RECORD

Eno.50 Liber·O·Igreedの記録

 マイルーム。
 それは魔導クローンにとっての憧れだ。

 魔導クローンは組織の物品である。適切な管理の下、衣食住を保証する代わりに制限がある。

 例えばそう、複数人の相部屋であるとか。
 ウッドカットは20人くらいの魔導クローンが一つ屋根の下で暮らしている。そうなれば、個別の部屋など用意出来ない。

 精々、純人間であるミカゼにだけ用意されるとか、そのくらいだ。

 久しぶりの個室だ。
 研究所以来じゃないか? あそこは聴劣化を一人しか用意してなかったから。

 服をどれだけ掛けてもいいし、テーブルには僕の物を置きっぱなしにしてもいい。風呂の交代を気にしなくてもいいし、冷蔵庫の物が勝手に食べられることもない。

 素晴らしい。素晴らしい自分の空間!

 不意に、ノック音が補聴器を通じて聞こえた。
 方向は分からなかったが、恐らく出入口から。

「ん? ミカゼか」



 扉を開けても帽子しか見えなかったが、見慣れたそれだった。

「部屋の様子を見に来たが、大丈夫そうだな」


「最っ高ーだよ! いやあ、僕はこういうのを求めてたのかもしれないね」


「そうか」



 僕の脇を潜って、ミカゼが部屋の中に入る。
 気になったのはミカゼの持つ大きな荷物だったが、それを端の方に置いて大きく伸びをした。

「それどうしたの?」


「これか? 俺の荷物だが」


「いや、何で僕の部屋にって事」


「置かせてもらおうと思って」


「は?」


「鍵も借りていいか?」


「は??」


「寝泊まりをするほどでもないが、武器の整備は必要だから――」


「いや、君、部屋借りてるでしょ!?
 そっちでやれよ! 僕の部屋でやる必要ないじゃん!!」


「置き場がなくて……」


「来てすぐなのに!?!?」


「そういう訳だ。
 毎日来るわけじゃないんだ、一箇所くらい貸してくれ」


「ああああヤダって言っても君は純人間サマだもんねぇーーーーっっっ
 あーーークソ!!」



 僕の憧れは、一瞬で崩れ去った。