RECORD
Eno.53 オルヴァン・フォンスの記録
門の下世界の上、或いは中央にて
おはよう、こんばんは?
本日もお日柄も良く、初めましての貴方とこんにちは
(………)
(………死んだ後も、感覚は、続くのか……)
今に至る直前の記憶はある、意識も正常であるからこそ不思議な感覚だった。死の先には完全な無とまでは行かずとも、人間的感覚や意識は連続しないものだと勝手に思っていた。
だから、死後とはこうなのかと現世には決して伝えられない感覚に対して妙な納得感を抱きながら──
「な、何が起きてるんだ!?」
「う、狼狽えるな!!」
しかし、聞こえてきた聞き慣れた怒声が今はまだ現なのだと理解させる。否、或いは死後も彼等が共にいる可能性は否定出来ない。だが…
(痛覚が…続いてる)
ここまで感覚まで鮮明なのも奇妙な話だ。
あの世について何一つ知らないけれど、現と言えそうな理由なら幾らでもある。
ようやく薄らと目を開けてみれば辺りは、暗闇…だが辺りに様々な様子が、世界が、人が、生物が、明滅している不気味な様で懐かしい様な不思議な空間が広がっていた。
そんな床も天井も壁も概念として存在しなさそうな場所に何故自分は寝転べているのかと思って──
「ぬぁっ…!?」
その瞬間床が抜けた様に落下、いや上昇しているのか、分からない状態になって身体が複数方向に重力が展開されている様に振り回される。
先ほどの様に、自分の意識を自分の思う空間のレベルにまで一旦戻さねばならないと気付いたのは暫く経ってからだった。
*
「入口も出口もない空間…」
「しかも、頻繁に奇形の化け物が現れるんです…」
最早、この場において敵も味方もない。
オルヴァンに、計画の最高責任者、その補佐官、護衛13人、協会員8人。
幸いこの中でそれを理解出来ない人間は辛うじていなかったらしい、オルヴァンへの視線が厳しい者も無論いるが、ここを抜け出せるか否かの状況ではそれは些末だった。
「その化け物は、何をしてくる」
「這い寄ってきました…それに接触された者は……魔力の様に霧散してしまって…」
「……一か八かで転移術を試す者もいましたが、いつも通りの結果です。魔力が枯渇して亡くなってしまいました。その遺体も…」
「ええい…なんとかならんのかね!」
何もかもから遮断された様な世界の中で、分かる事は手詰まりの様な状況である事。
皆が唸っていたその時──
『だれ、だれ』
「!?」
誰かの声に思わずオルヴァンは辺りを見回すが自分達以外にはやはりおらず、周囲の人間はそんなオルヴァンの様子を怪訝そうな顔で見ていた。
「い、いえ……少し、幻聴が聞こえただけです」
幻聴にしては明瞭すぎたがこれ以上混乱の種を増やしたくはなかった。
『ここは境界、可能性になりきれなかった記憶と空間の場所』
だが、それはずっと声をかけてきていた。
『生きたままここに来ちゃうなんてすごい』
その声は、男で女で大人で子供で老人で高くて低くて人の様で人の様ではない、全ての音を混ぜ込んで無理やり声にした様なそれは一つの存在から発せられる音ではないことはすぐにわかった。
『すごい力、引き寄せすぎた世界同士、貴方たちはそのど真ん中、だから境界に来た、貴方は中でもその中心点。点の中にいるの』
周囲の人間の声よりも音量が大きく設定されている様に他の会話が耳に入ってこない。或いは、惑わせる為のものなのかもしれないが、この一連を否定する材料もありはしない。
『門は開かれた、下の世界、濃厚な魔力がいっぱい、沢山生き物尽きてるよ』
「長官、どうされたんですか!」
『たいへん、たいへん、災いに愛された下の世界、おめでとう貴方達はその因子』
「長官!!貴様よもやここについて何か知っているのではないか!」
『出たい?生き物のいる場所じゃない、おめでとうかわいそう、方法ならね』
『でもでも因子はね、危ないね』
ふわふわとした言葉ばかりが飛び交う。
だが
『異物はね、ぺってしないとだからね』
だが──
(俺が……俺は業から逃れられないらしい)
本日もお日柄も良く、初めましての貴方とこんにちは
(………)
(………死んだ後も、感覚は、続くのか……)
今に至る直前の記憶はある、意識も正常であるからこそ不思議な感覚だった。死の先には完全な無とまでは行かずとも、人間的感覚や意識は連続しないものだと勝手に思っていた。
だから、死後とはこうなのかと現世には決して伝えられない感覚に対して妙な納得感を抱きながら──
「な、何が起きてるんだ!?」
「う、狼狽えるな!!」
しかし、聞こえてきた聞き慣れた怒声が今はまだ現なのだと理解させる。否、或いは死後も彼等が共にいる可能性は否定出来ない。だが…
(痛覚が…続いてる)
ここまで感覚まで鮮明なのも奇妙な話だ。
あの世について何一つ知らないけれど、現と言えそうな理由なら幾らでもある。
ようやく薄らと目を開けてみれば辺りは、暗闇…だが辺りに様々な様子が、世界が、人が、生物が、明滅している不気味な様で懐かしい様な不思議な空間が広がっていた。
そんな床も天井も壁も概念として存在しなさそうな場所に何故自分は寝転べているのかと思って──
「ぬぁっ…!?」
その瞬間床が抜けた様に落下、いや上昇しているのか、分からない状態になって身体が複数方向に重力が展開されている様に振り回される。
先ほどの様に、自分の意識を自分の思う空間のレベルにまで一旦戻さねばならないと気付いたのは暫く経ってからだった。
*
「入口も出口もない空間…」
「しかも、頻繁に奇形の化け物が現れるんです…」
最早、この場において敵も味方もない。
オルヴァンに、計画の最高責任者、その補佐官、護衛13人、協会員8人。
幸いこの中でそれを理解出来ない人間は辛うじていなかったらしい、オルヴァンへの視線が厳しい者も無論いるが、ここを抜け出せるか否かの状況ではそれは些末だった。
「その化け物は、何をしてくる」
「這い寄ってきました…それに接触された者は……魔力の様に霧散してしまって…」
「……一か八かで転移術を試す者もいましたが、いつも通りの結果です。魔力が枯渇して亡くなってしまいました。その遺体も…」
「ええい…なんとかならんのかね!」
何もかもから遮断された様な世界の中で、分かる事は手詰まりの様な状況である事。
皆が唸っていたその時──
『だれ、だれ』
「!?」
誰かの声に思わずオルヴァンは辺りを見回すが自分達以外にはやはりおらず、周囲の人間はそんなオルヴァンの様子を怪訝そうな顔で見ていた。
「い、いえ……少し、幻聴が聞こえただけです」
幻聴にしては明瞭すぎたがこれ以上混乱の種を増やしたくはなかった。
『ここは境界、可能性になりきれなかった記憶と空間の場所』
だが、それはずっと声をかけてきていた。
『生きたままここに来ちゃうなんてすごい』
その声は、男で女で大人で子供で老人で高くて低くて人の様で人の様ではない、全ての音を混ぜ込んで無理やり声にした様なそれは一つの存在から発せられる音ではないことはすぐにわかった。
『すごい力、引き寄せすぎた世界同士、貴方たちはそのど真ん中、だから境界に来た、貴方は中でもその中心点。点の中にいるの』
周囲の人間の声よりも音量が大きく設定されている様に他の会話が耳に入ってこない。或いは、惑わせる為のものなのかもしれないが、この一連を否定する材料もありはしない。
『門は開かれた、下の世界、濃厚な魔力がいっぱい、沢山生き物尽きてるよ』
「長官、どうされたんですか!」
『たいへん、たいへん、災いに愛された下の世界、おめでとう貴方達はその因子』
「長官!!貴様よもやここについて何か知っているのではないか!」
『出たい?生き物のいる場所じゃない、おめでとうかわいそう、方法ならね』
『でもでも因子はね、危ないね』
ふわふわとした言葉ばかりが飛び交う。
だが
『異物はね、ぺってしないとだからね』
だが──
(俺が……俺は業から逃れられないらしい)