RECORD
Eno.53 オルヴァン・フォンスの記録
終焉の心に花向けを
彼等はこの境界に残されてから暫くして分かった事があった。
時間の経過という概念がこの場所においては酷く希薄、或いは存在していて存在していない様だった。
それに気付いたのは、餓死しない事という最も皆が懸念していた要素からだった。一先ず安堵すべき点だったが、能動的な劣化行為に対してはどうしようもなかった。
「魔力に霧散されてしまうよりこの方がマシだったのだろうか」
自害という選択が許されるのは幸というべきか、否か。
この場所に来てからどれだけ経過したのか、皆分かっていなかった。ただ、ここに来た当初から時間は少なくとも経過はしていると思わせるのは減少した5人。人数の減少。
耐えきれず死んだ者が1人、それより前に死んだ4人は奇形の化け物達にやられた、その状況下で健全な精神性を保ち続ける方が難しかっただろう。
「……長官、言っていた事は本当なのか」
「………幻聴だと最初は思ってましたが、恐らくは本当なんだと思います」
オルヴァンが聞いた声。
この場所が何なのか、襲いくる彼等が何なのか、そして…
『異物である証明、吐き出すべき証明、貴方、因子、倒したら良いよ良いかも?』
脱出の為の唯一のヒント。
それが文字通りなのかどうかすら分からないが、オルヴァンはこの状況に陥った事に対して責任を感じていた以上この場にいる人々を守る為に戦う義務感を抱いていた。ならば、事の真偽はどうあれひたすらに彼等を討伐し続けなければならないのは間違いないだろう。
「だが、もう既に数多のあの化け物どもを倒したではないかいつになったら出られるのだ!」
「………何か、見落としているのでしょうか」
だが、報告していない事柄が一つだけあった。
『因子、因子、貴方達持ち込んではいけないの、災い』
(その意味合いは、結局何なのか…)
オルヴァンにとって疑問は増えるばかりだった。片腕もないままに失血死すらせずにここに存在出来ている事、あの声が聞こえるという事、それが何を意味するのか。
あと20人
*
「埋める土どころか、遺体すら残らないのが……悔やまれるな」
「仕方ないですよ、あんな計画を立案して進めた報いなんです」
「我々だけでも生き残りましょう」
本当に、仕方なかったのだろうか?自分達だってそう言われる側なのに。そう過ぎる事すらも罪悪としてのしかかる。
今は何日だろう。
あと19人
*
「長官、あの時あの事故がなければこうはなっていなかったのでしょうか」
「……さぁな、俺には答える権利を持たない」
片腕のみで振るう剣にも慣れてきた頃に、腕を切った当人からの問いかけ。
自分のせいなのだろうと喚く事すらも無意味であると理解している以上、答えを持たない。
あと15人
*
「介錯などして…ここから出られる確率が下がるだけですよ」
「………そうかもしれないな」
あと12人
*
「化け物が、こんなに…っいつの間に!?」
「自分の立ってる場所の認識を希薄にしろ!距離はそれですぐに取れ…っ」
「ダメだ!できな…ッくるな、くるなあぁぁぁ!!!」
「アイツはもうダメです!長官、我々だけでも逃げましょう!」
「ッ………ああ、行くぞ!俺に続け!」
あと8人
*
「お前達、少し休め。俺がその間お前達を──」
「誰のせいだと思ってるんだ!!」
「そうだ!この計画そのものも、失敗させたのも、どいつもこいつも…全部誰かのせいでこんな事になってやがるじゃないか!ちくしょう!こんな事ならあんな馬鹿みたいな話になんか乗るんじゃなかった!!」
「……頼む、お前達には生きていてほしい。お前達の怒りは尤もだ、だからこそ……俺が命をかけてお前達は自分の身を守る事だけ考えてくれ…頼む」
あと6人
*
「長官、貴方ご家族は?」
「……両親と姉と…もうすぐその子供が」
「…自分には、妻と息子がいました。息子はまだ歩けないぐらい小さかってのですけどね」
「………では、早く…帰ってやらないとだな」
「……妻子を持たない貴方にはきっと分かりません、この不安は」
「………息子に顔も覚えられないまま。自分も魔力にされてしまうのでしょうね」
「俺の方かもしれん」
「いいえ、何となく分かります。貴方はきっと…選ばれたのでしょうね」
「………違う」
「いいえ、違いません。だから──」
「お恨みします、長官」
あと1人
*
「600体」
*
「1500体」
*
「1845体」
*
「2390体」
*
「3701体」
『そろそろ?』
『きっと?』
時間の経過という概念がこの場所においては酷く希薄、或いは存在していて存在していない様だった。
それに気付いたのは、餓死しない事という最も皆が懸念していた要素からだった。一先ず安堵すべき点だったが、能動的な劣化行為に対してはどうしようもなかった。
「魔力に霧散されてしまうよりこの方がマシだったのだろうか」
自害という選択が許されるのは幸というべきか、否か。
この場所に来てからどれだけ経過したのか、皆分かっていなかった。ただ、ここに来た当初から時間は少なくとも経過はしていると思わせるのは減少した5人。人数の減少。
耐えきれず死んだ者が1人、それより前に死んだ4人は奇形の化け物達にやられた、その状況下で健全な精神性を保ち続ける方が難しかっただろう。
「……長官、言っていた事は本当なのか」
「………幻聴だと最初は思ってましたが、恐らくは本当なんだと思います」
オルヴァンが聞いた声。
この場所が何なのか、襲いくる彼等が何なのか、そして…
『異物である証明、吐き出すべき証明、貴方、因子、倒したら良いよ良いかも?』
脱出の為の唯一のヒント。
それが文字通りなのかどうかすら分からないが、オルヴァンはこの状況に陥った事に対して責任を感じていた以上この場にいる人々を守る為に戦う義務感を抱いていた。ならば、事の真偽はどうあれひたすらに彼等を討伐し続けなければならないのは間違いないだろう。
「だが、もう既に数多のあの化け物どもを倒したではないかいつになったら出られるのだ!」
「………何か、見落としているのでしょうか」
だが、報告していない事柄が一つだけあった。
『因子、因子、貴方達持ち込んではいけないの、災い』
(その意味合いは、結局何なのか…)
オルヴァンにとって疑問は増えるばかりだった。片腕もないままに失血死すらせずにここに存在出来ている事、あの声が聞こえるという事、それが何を意味するのか。
あと20人
*
「埋める土どころか、遺体すら残らないのが……悔やまれるな」
「仕方ないですよ、あんな計画を立案して進めた報いなんです」
「我々だけでも生き残りましょう」
本当に、仕方なかったのだろうか?自分達だってそう言われる側なのに。そう過ぎる事すらも罪悪としてのしかかる。
今は何日だろう。
あと19人
*
「長官、あの時あの事故がなければこうはなっていなかったのでしょうか」
「……さぁな、俺には答える権利を持たない」
片腕のみで振るう剣にも慣れてきた頃に、腕を切った当人からの問いかけ。
自分のせいなのだろうと喚く事すらも無意味であると理解している以上、答えを持たない。
あと15人
*
「介錯などして…ここから出られる確率が下がるだけですよ」
「………そうかもしれないな」
あと12人
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「化け物が、こんなに…っいつの間に!?」
「自分の立ってる場所の認識を希薄にしろ!距離はそれですぐに取れ…っ」
「ダメだ!できな…ッくるな、くるなあぁぁぁ!!!」
「アイツはもうダメです!長官、我々だけでも逃げましょう!」
「ッ………ああ、行くぞ!俺に続け!」
あと8人
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「お前達、少し休め。俺がその間お前達を──」
「誰のせいだと思ってるんだ!!」
「そうだ!この計画そのものも、失敗させたのも、どいつもこいつも…全部誰かのせいでこんな事になってやがるじゃないか!ちくしょう!こんな事ならあんな馬鹿みたいな話になんか乗るんじゃなかった!!」
「……頼む、お前達には生きていてほしい。お前達の怒りは尤もだ、だからこそ……俺が命をかけてお前達は自分の身を守る事だけ考えてくれ…頼む」
あと6人
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「長官、貴方ご家族は?」
「……両親と姉と…もうすぐその子供が」
「…自分には、妻と息子がいました。息子はまだ歩けないぐらい小さかってのですけどね」
「………では、早く…帰ってやらないとだな」
「……妻子を持たない貴方にはきっと分かりません、この不安は」
「………息子に顔も覚えられないまま。自分も魔力にされてしまうのでしょうね」
「俺の方かもしれん」
「いいえ、何となく分かります。貴方はきっと…選ばれたのでしょうね」
「………違う」
「いいえ、違いません。だから──」
「お恨みします、長官」
あと1人
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「600体」
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「1500体」
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「1845体」
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「2390体」
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「3701体」
『そろそろ?』
『きっと?』