RECORD

Eno.500 シルヴィア・ペルペトスの記録

ぼくの一族

『雷狼がくるぞ!』

頭の中を過る、それこそ赤ん坊の頃から耳にタコができる程に言われてきた文句。


――これから話すことは、僕が生まれるよりも前のこと。
  ずっと昔なのか、つい最近なのか、それはぼくは知らないけれど――

ぼくの一族は、森の中、ひっそりと暮らしていた、温厚な一族だったみたい。

青々とした木々の実りを享受して。
必要な分だけ大地の恵みを分けて貰う。
時々、南のエンや北のリーシュイからやってくる行商人と取引をしたり。

そうして細々と生きてきた一族だ。

……でも、とあるとき、縄張り争いが起こった。

電気を自在に操る雷狼の一族がぼくたちの村に攻め込んできた。

非常に強力な体質を持つ雷狼の一族にぼくら一族は歯が立たなかった。

戦える人は、みんな倒されちゃったという。

[[丁度電気機器の文明開化の頃合い
 それに伴って電気を自在に発生させられる、溜め込まれる体質を持つ雷狼の一族が目をつけられ、
 次々と捕らえられ、使い捨ての電池のように浪費されていったのをぼくは知らない。]]

そうして、森の奥に逃げ延び、生き残りが今の僕らの村の現状……らしい。

それ以来、残った村のジジババは雷狼の恐ろしさについてずっと語りかけてくる。
風の噂では、もう雷狼の一族は滅んでしまっているって聞いた。

でも、ジジババ達はずっと雷狼の影におびえている。
どこに潜んでいるかわからない、雷の影に。

大人……って呼べる大人は居ない。
村に居るのは、ジジババか……残された赤ん坊が何人か。

でもその赤ん坊も、村を移動した際に殆どしんじゃった。

ちゃんと成長してるのは、ぼくひとりらしい。
同年代の子は、一人もいない。
だから、期待される、役目を与えられる。
一族のために。

『力に屈服することのないよう、強くなりなさい。』
『何事があっても切り抜けられるよう、賢くなりなさい。』
『血を絶やすことのないよう、次の世代を沢山産みなさい。』

ぼくは、それでも、そういう生き方でも良いとおもったんだ。
みんなが、そういうぼくであれ、と期待をかけてくれるから。