RECORD

Eno.34 クロンの記録

月日

公式戦も終わりが告げられ、帰路につく者、留まる者、別世界へと旅立つ者。皆思い思いの路へと進んでいるようだ。

この一月、『探しもの』について何らめぼしい情報は得られなかった。食堂や酒場、試合が終わった後、事あるごとに聞いて回ったが、成果はさっぱりだ。

当たり前と言えば当たり前か。何せここには知り合いなんて一人も居ないんだ。それでも、探さずにはいられなかった。俺が探したかったんだ。

戦いに明け暮れ、4桁の勝利が近くまで来た時には、俺が何を探していたのかも殆ど思い出せていた。何故こうも大切で唯一無二なハズのものを忘れられたのか。自分で自分に腹が立つ。

今こそ改めて聞き直せば、俺の知る限りの事を伝えればもしかしたら……そこまで考えた所で、ふと懸念が浮かんだ。

「ーー俺にアイツを探す権利があるのか?勝手に姿を眩まし、手紙も連絡も寄越さなかったこの俺が、今更探してどうなるってんだよ……。」

見つかるかどうかも分からず、もし探し出したとして、どんな顔をすれば良いのか。せっかく忘れられていた所に俺が現れたとしたら?待ち受けているのは『拒絶』、『嫌悪』に他ならないのではないか?

会って話しがしたいと言う気持ちと会う事を恐れている気持ち。決して相容れない二つの思いが交錯し、俺の判断を鈍らせていく。

……それでも、そうだったとしても、俺はやっぱり会いたいんだ。会って一言、謝りたい。客観的に見りゃ、自分勝手極まりないだろうな。結局自己満足に陥りたいだけなんだ。

そこで拒絶されるのならば、俺は今までの俺として、一傭兵として戦いの路に戻れば良い。…だが、もし、もしも、許されるのならーー。

いや、止めておこう。もしもの話なんて下らないさ。
その時は今までの俺に戻るだけなんだ。戦う事でしか自分の価値を見出せない、哀れな傭兵にな……。