「……ごちそうさま。相変わらず美味かったぜ。ありがとなばーさん。」

手を合わせて、今までの分も感謝し胃袋をささえてくれたお婆さんに感謝の意を伝えた。

「あの嬢ちゃんがいねえのは残念だが……しょうがねぇな。後で何か贈っとくか。」
辺りを見回し、首に包帯を巻いた少女がいないことを確認すると、ふぅとため息をつき、ぶつぶつと独り言を放った。

「……ま、いずれまた会うこともあるだろうさ。そん時はまた酒でも飲みながら、話せたらいいなぁ。」

すっと立ち上がり、名残惜しそうに食堂を後にする。
ここに来てからの記憶を脳内で想起しつつ、自分の部屋へと戻るだろう。

「いやー、いつ食ってもうめぇなここのメシはよ。
だが、そろそろ食い納めかねぇ……。」

女子力がどうとか謳われたチーズドリアにいつものビール。
閑散とした食堂にて一人食事中。

「ふー、久しぶりにここでメシでも食うか。」

あんかけ焼きそばを注文しもしゃもしゃと食べている

「…こっちも人が少ないどころか、誰もいねーな。
せっかくポンマスが試合してくれてもこれじゃな……。」

「今更ここでのんびりしたって何かあるわけでも無いんだがな。飯食いにちょくちょく来てはいるが…帰るタイミングを失いがちなんだよな。いつ帰るかねぇ……。」

「お、おいおい…わざわざ悪いな。そこに関してはあんまり気にせんでくれ。俺も俺なりに今の人生楽しんではいるしな。それに、あっちの世界でも皆が皆嫌ってる訳でもねーしな。昔に比べりゃマシになってきてるさ。
耳に関しちゃ多少は助かってる部分もあるんだろうな。だがな、尻尾は……」


明らかに邪魔そうな目だ。むしろこの見た目にこんなボリュームたっぷりな尻尾は欲しくなかったと言う顔をしている。

「そういや場所によってメニューも違うんだったな。カニチャーハンは酒場じゃ食えねぇもんな。酒場でつまみ食うのも良いが、ここでも酒飲めちまうから、ついついこっちに寄りがちだな…。」

「そっか、兄ちゃんのとこにも居ないんだな。意外と珍しいのかねぇ。
圧倒的に多いのは、俺たち獣人よりも普通の姿の人間だなぁ。ま、俺らみてーな耳尻尾付きは場所によっちゃ腫れ物扱いされるんでね。人里離れた所で慎ましく暮らしてんのが殆どさ。」

やれやれとため息を吐く。自身もそんな仕打ちを受けた事があるのか、そんな現状を余り快くは思ってないようだ。