RECORD
Eno.76 ニアの記録
アムニアストゥーラへ
この手紙が届いているという事は
私達は今頃マルセイユからヴェネツィアの飛行機に乗っている頃だろう
そもそも貴公は飛行機というものを知っているだろうか?
鉄で出来た巨大な鳥に 人や貨物を乗せて飛ぶ代物なのだが
まあいい ともあれ私達は 私の故郷にたどり着いた
故郷と言っても感慨深さはあまりないがね
貴公なら分かるだろう?百年そこらならともかく
千年以上も生きていると国体を保てなくなる国などザラにある
こと 私の故郷たるローマは東西分断されたあとも
事実上のローマとして保ってきたと史実には書かれているが
私からすればピザンツとして分割統治された時点で私の故郷は終わっていた
それでも改めて此処を訪れたのは シュガーレスが見たがっていたからだ
幸い あの時私が辛酸を舐めさせられた円形闘技場は
史跡として未だ残っているから 一切のエートスもないわけではないしね
あの子はこうして私の見てきた景色を
最長でも一世紀に満たない須臾の時を使って吸収していくのだろう
私にとってもそうだが 貴公にとってもあっという間さ
私があの子に出来る事は何なのだろうと 考えない日はなかった
幸を求めるのは当然としても 何があの子の幸なのかとね
今でも答えは出ない
けれど 答えの出ない問いに対してあるかなきかの時を費やす事も
須臾の生き方なのだろうと思っている
なあ 本当はもっと 良い路が (インクでかき消された一節)
憂いはないと言ったけれど きっと私は最期まで迷い続ける
故に あの子を見つめ続け 正しく壊れられるのだろう
今更何を言っても貴公は行動を変えないのだろうから
せめて遺言代わりに私の言葉を遺しておくとするよ
──シュガーレスが 何故シュガーレスになったかを考えた事があるか?
ミジメ力とやらの悪行に依るものか?
私が愚かにも情愛に溺れてしまったからか?
サイトやおまえが あの子を誑かしたからか?
そのどれもが答えだが 核心はそのいずれでもない
あの子は 親に愛されなかった子だ
愛されずに それでも愛を求め 視線を引く為なら手段を択ばなくなった飢餓状態のこどもだ
誰かひとりの行動で染まってしまうほど あの子は"甘くない"
何が言いたいか分かるか?
もし貴公が身籠っているのなら どうかその子たちの事も見てやってほしい
私やシュガーレスの幻影ではなく その子たちの須臾を見つめてほしい
それが 第二 第三のシュガーレスを生み出さないたったひとつの方法であり
それは間違いなく 貴公にしかできないことだ
私達は今頃マルセイユからヴェネツィアの飛行機に乗っている頃だろう
そもそも貴公は飛行機というものを知っているだろうか?
鉄で出来た巨大な鳥に 人や貨物を乗せて飛ぶ代物なのだが
まあいい ともあれ私達は 私の故郷にたどり着いた
故郷と言っても感慨深さはあまりないがね
貴公なら分かるだろう?百年そこらならともかく
千年以上も生きていると国体を保てなくなる国などザラにある
こと 私の故郷たるローマは東西分断されたあとも
事実上のローマとして保ってきたと史実には書かれているが
私からすればピザンツとして分割統治された時点で私の故郷は終わっていた
それでも改めて此処を訪れたのは シュガーレスが見たがっていたからだ
幸い あの時私が辛酸を舐めさせられた円形闘技場は
史跡として未だ残っているから 一切のエートスもないわけではないしね
あの子はこうして私の見てきた景色を
最長でも一世紀に満たない須臾の時を使って吸収していくのだろう
私にとってもそうだが 貴公にとってもあっという間さ
私があの子に出来る事は何なのだろうと 考えない日はなかった
幸を求めるのは当然としても 何があの子の幸なのかとね
今でも答えは出ない
けれど 答えの出ない問いに対してあるかなきかの時を費やす事も
須臾の生き方なのだろうと思っている
なあ 本当はもっと 良い路が (インクでかき消された一節)
憂いはないと言ったけれど きっと私は最期まで迷い続ける
故に あの子を見つめ続け 正しく壊れられるのだろう
今更何を言っても貴公は行動を変えないのだろうから
せめて遺言代わりに私の言葉を遺しておくとするよ
──シュガーレスが 何故シュガーレスになったかを考えた事があるか?
ミジメ力とやらの悪行に依るものか?
私が愚かにも情愛に溺れてしまったからか?
サイトやおまえが あの子を誑かしたからか?
そのどれもが答えだが 核心はそのいずれでもない
あの子は 親に愛されなかった子だ
愛されずに それでも愛を求め 視線を引く為なら手段を択ばなくなった飢餓状態のこどもだ
誰かひとりの行動で染まってしまうほど あの子は"甘くない"
何が言いたいか分かるか?
もし貴公が身籠っているのなら どうかその子たちの事も見てやってほしい
私やシュガーレスの幻影ではなく その子たちの須臾を見つめてほしい
それが 第二 第三のシュガーレスを生み出さないたったひとつの方法であり
それは間違いなく 貴公にしかできないことだ