RECORD

Eno.16 ミカヅチの記録

アメノハシダテにて

「……で、待ち合わせ場所に来たけど」



バチバチと稲妻を纏いながら、殺風景な岬へ降り立った。
青い月の光に照らされていた、ひとつの影が振り向く。
よく見知った、己の天敵の顔が見える。

「やっほ~虎熊くん浅慮で真っ直ぐにしか歩けないバカ虎。遅かったね」


「帰っていいか?」


「あはは、やっぱぼく君の事嫌いだよ」


「で、連れてってくれるんでしょ?ぼくを知らない人がいる場所に」


「まあ……頼まれたからな」


「それにお前の気持ちだって分からんでもないし、今回だけだぞ」



和装に身を包んだ白兎を背負い、稲光となって夜空を駆ける。

目指すはフラウィウス。

「……本当に君の事は好きになれないよ、ミカヅチ」


「まあ……それでも」



今回ばっかりは君の優しさに救われるよ君ばっかり幸せになってずるいじゃないか


……あのちっぽけな……君が画廊で出会ったネズミくんが惚れるのも分かるね自分の記憶に蓋をして都合良く振舞っていた忘れんぼの癖に


あーあ、ぼくにもそんな相手が居ればなあ……こんな暮らししなくても良かったのかな君ばっかり幸せになるのは不公平じゃないか



「……全部聞こえてるぞ、バカ兎」


「はは、そうだった。本当にそういうとこだぞぼくの事は助けてくれなかったじゃないか



「……まあ、そうだな」



それ以上の会話は続かなかった。