RECORD
Eno.16 ミカヅチの記録
ある雨の夜の記録
しとしとと秋雨が降る夜道。
ミカヅチはいつもと変わらない様子で宿への帰路に就いていた。
ほんのりと酒で緩んだ思考。
まだ本調子ではないけど、自分で定めた一週間の禁酒を終えて久しぶりに一杯を飲んだ。
ほろよい気分になるのも、足元がふらふらとするのも初めての経験。
今度はマグスも誘って酒を飲んで、一緒にほろ酔いになるのも悪くない。
そうして曲がり角を進んだ先に、街灯に照らされたひとつの影があった。
手には旗槍、耳は白く垂れている。
夜闇に赤い瞳が光っていた。
ごう、と一陣の風が吹き抜けた瞬間、市街地に金属の音が響く。
旗槍がミカヅチの身体を貫こうとし、それを防いだ音が夜の闇の中へと広がったのだ。


火花の様な殺意を向けられ、流石のミカヅチも黙ってはいられない。
槍の柄を掴み押し返しながら睨み合う。




鈍い音と共に白兎を押し返す。
ビリビリと腕が痺れる感覚。これも初めてだ。



挑発にも似た言葉。それを聞いた瞬間、凄まじい轟音と共に稲光が奔った。
地の底から響く、まさしく鬼の声。


言い終わるのが先かどうか。
白鬼は光にも等しいスピードで兎へと迫り、腕を振るった。
……しかし、その腕は旗槍に阻まれる。
病み上がりの身体では全力を出し切れなかったのだ。
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夜の街に剣戟のような音が響く。
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白い兎と白い鬼が宙を舞い、稲光と火花を散らす。
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秋雨は大雨へと変わり、二つの影を濡らす。
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互いに向き直り、次の一撃で決着をつけるべく体を跳ねさせる。
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瞬間。
ミカヅチから攻撃の意志が抜けた。
夥しい量の鮮血が雨に流れていく。
気付けば、ヤカミは血と雨に濡れた旗槍をミカヅチの喉元へと突き付けていた。

呼吸が荒い。
出血で視界が霞む。
焼けるような両腕の痛みで辛うじて意識が保てている。

どうしてもクソもあるか。
続きがしたかったなら自分の本心を隠すことをやめてしまえ。



ふ、と意識が途切れた。
ちぇ、このままだとまた心配かけちまうのに。



ばさりと旗槍を振るい、血を振り払う。
ついでに近くの民家へと足を運び、怪我人の闘技者が居るから助けを呼ぶようにと声をかけた。

そうして、立ち去る間際に。
両腕がズタズタに裂かれ、意識を失った白鬼の元でそう呟いた。


ガン、と足元を苛立ちながら踏みつけてからその場を後にした。
ミカヅチはいつもと変わらない様子で宿への帰路に就いていた。
ほんのりと酒で緩んだ思考。
まだ本調子ではないけど、自分で定めた一週間の禁酒を終えて久しぶりに一杯を飲んだ。
ほろよい気分になるのも、足元がふらふらとするのも初めての経験。
今度はマグスも誘って酒を飲んで、一緒にほろ酔いになるのも悪くない。
そうして曲がり角を進んだ先に、街灯に照らされたひとつの影があった。
手には旗槍、耳は白く垂れている。
夜闇に赤い瞳が光っていた。
ごう、と一陣の風が吹き抜けた瞬間、市街地に金属の音が響く。
旗槍がミカヅチの身体を貫こうとし、それを防いだ音が夜の闇の中へと広がったのだ。
「こんばんは、ミカヅチくん」
「……何の用だよ、クソウサギ」
火花の様な殺意を向けられ、流石のミカヅチも黙ってはいられない。
槍の柄を掴み押し返しながら睨み合う。
「闇討ちとは狡い真似をするじゃねえか、あァ?」
「ははは、聞いた話だと……君、人を食べるの止めたらしいね」
「それで煉獄病にまで罹ったんだろう?なら……」
「ちょうどお見舞いに来てあげたんだよ」
鈍い音と共に白兎を押し返す。
ビリビリと腕が痺れる感覚。これも初めてだ。
「……誰から聞いた?」
「別に、誰から聞いたって良いでしょ。……だって君、伴侶にも話してないでしょ?」
「聞いても何も教えてくれなかったんだもん」
挑発にも似た言葉。それを聞いた瞬間、凄まじい轟音と共に稲光が奔った。
地の底から響く、まさしく鬼の声。
「マグスに何をした」

「はは、怒ってやんの。……別に何もしてないよ、本当にお話をしただけさ」
言い終わるのが先かどうか。
白鬼は光にも等しいスピードで兎へと迫り、腕を振るった。
……しかし、その腕は旗槍に阻まれる。
病み上がりの身体では全力を出し切れなかったのだ。
そう、初めから君の事は気に食わなかった。
夜の街に剣戟のような音が響く。
真っ直ぐで、浅慮で、後先構わず突っ込んで。
白い兎と白い鬼が宙を舞い、稲光と火花を散らす。
その癖自分は罪を赦して、赦されて、大切な物を見つけて。
秋雨は大雨へと変わり、二つの影を濡らす。
ずるい。ずるい。ずるいずるいずるい。
互いに向き直り、次の一撃で決着をつけるべく体を跳ねさせる。
それならどうしてぼくのことも助けてくれなかったんだ。
「……!」
瞬間。
ミカヅチから攻撃の意志が抜けた。
夥しい量の鮮血が雨に流れていく。
気付けば、ヤカミは血と雨に濡れた旗槍をミカヅチの喉元へと突き付けていた。
「……またぼくの心を読んだな、勝手に」
呼吸が荒い。
出血で視界が霞む。
焼けるような両腕の痛みで辛うじて意識が保てている。
「……どうして……止めたんだよ……」
どうしてもクソもあるか。
続きがしたかったなら自分の本心を隠すことをやめてしまえ。
「ぼくを……ぼくを罰してくれよ……」
「……バカウサギが」
「罰して欲しいんなら……自分の呪い位愛してやりな……」
ふ、と意識が途切れた。
ちぇ、このままだとまた心配かけちまうのに。
「……愛するってなんだよ」
「くそ……バカ鬼の癖に……」
「…………」
ばさりと旗槍を振るい、血を振り払う。
ついでに近くの民家へと足を運び、怪我人の闘技者が居るから助けを呼ぶようにと声をかけた。
「……君の大事なモノには何もしてないよ、本当に」
そうして、立ち去る間際に。
両腕がズタズタに裂かれ、意識を失った白鬼の元でそう呟いた。
「本当に……何もしてない。会ってすらもいない」
「……なんだよ、愛するって……」
ガン、と足元を苛立ちながら踏みつけてからその場を後にした。