RECORD

Eno.640 金の男の記録

黒のヴェルドン

どう足掻いたって、勝てないやつはいる。
不死者にしたって、実力というものは残酷だ。

自分が決して強者ではない、というのも理解している。
つまるところ、こうして自分が旅をしていて、気儘に暮らしていたとしても、
いずれは、どこかで捕まるという訳で。

不死者が元の世界に帰った所で待ち受けているのは、
面倒な事ばかり。

下手すりゃ封印を喰らうともなれば、誰だって帰りたくはない。
だからここと、もう一つの世界で暮らせるようにしときたかったのだが。

「そううまくいかねえよなあ」



嫌な予感は当たる。
仮にあれが、本当に別世界から帰ってきていて。
元の世界へと帰還していたのなら、大人しく黒の座はあの男に戻るだろう。

あの世界に戻りたくはない。
だが、どうしても一度は戻り、不死者としての役目を果たしているか。
狂っていないか、怪物に成り果てていないか、判断されるのであれば。

「逃げるしか、ねえかな」




無理な事は、誰よりも知っているのに。