RECORD

Eno.675 カーレの記録

種明かし

──カーレは彼。

彼はカーレ。


個人が希釈されている。
彼が誰かなんてわからないじゃないか!


「君たちは帰ってしまって」

「自分のことなんてあんまり知らないだろう」

「知らなくて良いし、知ることもない」

「話すための口はもうほとんど閉ざしてしまったから」

「そして話す相手ももういないだろう」

「彼はカーレ」


「君たちには名前と見た目しかわからない」







闘技者として登録が行われれば、肉体が一時保存されるんだって。

命が関わったとしても巻き戻す形で治療されるんだからまあすごいの。

倫理観に問題を持っているのに運営側も苦笑を浮かべていたのかもしれないけれど。

結局観客は熱狂がありゃ良いんだから!






シーズンごとに、限りがあるし。

そりゃ追い出されちゃいるけどさ。

でも毎度その度に登録しなおしゃ良いんだ。

ずっと戦い続けられるし。

ずっと生きてられるよ。

普通よりずっと長生きができるし。

永久在住権がなくても、戦い続けられればそれは。だってさ。

ね。

ここはヴァルハラみたいな場所だ。







彼は彼としか肯定ができず、またそれ以上になることは不可能である。
彼は今彼であるが、いつかは違う人になるのかもしれない。
今そのような見た目であることがどこかに書かれているからだろう。
戦いから逃げてしまった“彼”の見た目をしているし、しかし見た目だけではなく、それは“彼”自身でもある。
彼の時は止まってしまっているけれど、別にそんなことはなく彼は大人になった。


彼のことは何も知らないし、彼はへらりとわらって口を塞いでいる。

戦う場所なのに喋ってばかりなんてくだんないし。



これ以上のことはまた。