RECORD

Eno.94 エルクトイ=アンブラウグティウスの記録

離岸

きょうだいの存在は、俺にとって錨のようなものでした。

愛する皆がいたから、俺は神を信じて。

良い子、幸福な仔山羊のままで生きてゆけたのです。

気付かずにいられれば、きっと。

俺は今でも。



「――どうしたの? エルクトイ。
■■■■じゃないなんて、そんないじわるをいって」



違う。

「ほら、みんな。ちゃんとそろっているでしょう?」



違う。違う。

アレは。あんな物は。

「――エルおにいちゃん?」



虚ろな目をした何かが、目の前にあった。


俺が死んでも、終わらせないと。
もう、何一つ。繋ぎ止めてくれる幸福はないのだから。