RECORD
Eno.53 オルヴァン・フォンスの記録
報いる為の報い
沢山の部下が再会した時には遺体となっていた。
「魔石を追加で使うしかあるまいな」
「ではその様に……始末は、できないのですね」
「不可能ではないだろうがな、魔界の名のある者達と比べてアレには名前がない…だが、捕獲を命じられた以上そうするしかあるまい…」
尋問の為、というわけでもないらしい。なにせ、オルヴァンにはその後の処遇を決める権限も、そして仕事も回ってくる事はなかった。
「使うつもりなのだろう。此度の計画と関係なく」
「協会から資金を貰っているという噂も聞きますが…」
「……流言だ、真偽など我々には関係ない…仕事を果たすのみだ」
「…フォンス長官」
「例の計画の日程が前倒しになった、俺が不在の間代理を頼むぞ」
悪魔相手であろうとも、秩序の御子相手であろうとも、物量を力量で対処してくる理不尽たる存在相手に計画を邪魔されない為に命を賭けて戦いに行けと命令をしてきた男。
「死んだ者に引っ張られるな、任務とそれをこなす為の己の事だけ考えていれば良い」
何度、死ぬ事を強いて、死した者の事を振り払わせたか。
「この様な、金銭よりも夫がいてくれたらそれで良かったのです……貴方がたのお陰で私達は守られてるのでしょう、でも貴方達が同時に人殺しに思えてならないです」
男は地位が地位であったから、現場に行く機会は多くはなかった。本部での仕事が大半。
元々自主的に治安隊に属していた男にとってこれは運が良かったとは到底思えはしなかった。
「此度の防衛による死傷者……40名」
人と人ではない者、その力の差は歴然であり、フロレーヌ騎士団と違って練度もそのまとまりもないこのマリス騎士団はいつだって彼等の様な華々しさはなかった。
尤も、数多の血を双方で流している点は同じかもしれないが。
「それでも、貴方は守りたいものがありますか。騎士を名乗る者として……貴方は、殺さない。今一度、先に逝った人々を振り返りなさい」
秩序の御子はいつかそう語った。
男と家族の関係は普通だった、普通であるからこそ、守りたかった。そうした普通の関係を築いた人々が日常を作り、沢山生きている。そんな家族を持つ仲間達を何度も死なせに行った。
子を持たずとも、妻を持たずとも、人並みに弱きを守りたい心は持っていた。
「長官。この計画が上手くいけば、我々の世界はきっと救われますね!これで家族の元にも帰れます!」
『魔界の門にお前の魔力特性を…?いいや、そんな事をすればこの世界は──』
人々の期待と、悪魔の語る希望のない真実の狭間にて。
男は人並みに考え続けて、人並みの結論を出す他なかった。
彼は片棒を担がされた人間ではなく、最早その実行犯の側なのだ。
「違う!俺は金の為にやったわけじゃ……な、なんだその書類…ッ!?俺は違う、金の為なんかじゃ、本当に!」
真実の為に騙し、苦しめ、痛めつけもした。
後世の人間からはなんと言われるか、元フロレーヌ騎士団長シェード・ブラッツの様に冷血と称されるだろうか。
しかし彼ほどの事は為しておらず、半端者と称されるか。
どちらの評価も、決して嬉しいものではない事は確か。
「全ては……この世界の人々の為に」
男は最初から、第二の計画を失敗させる為に黙していた。
「魔石を追加で使うしかあるまいな」
「ではその様に……始末は、できないのですね」
「不可能ではないだろうがな、魔界の名のある者達と比べてアレには名前がない…だが、捕獲を命じられた以上そうするしかあるまい…」
尋問の為、というわけでもないらしい。なにせ、オルヴァンにはその後の処遇を決める権限も、そして仕事も回ってくる事はなかった。
「使うつもりなのだろう。此度の計画と関係なく」
「協会から資金を貰っているという噂も聞きますが…」
「……流言だ、真偽など我々には関係ない…仕事を果たすのみだ」
「…フォンス長官」
「例の計画の日程が前倒しになった、俺が不在の間代理を頼むぞ」
悪魔相手であろうとも、秩序の御子相手であろうとも、物量を力量で対処してくる理不尽たる存在相手に計画を邪魔されない為に命を賭けて戦いに行けと命令をしてきた男。
「死んだ者に引っ張られるな、任務とそれをこなす為の己の事だけ考えていれば良い」
何度、死ぬ事を強いて、死した者の事を振り払わせたか。
「この様な、金銭よりも夫がいてくれたらそれで良かったのです……貴方がたのお陰で私達は守られてるのでしょう、でも貴方達が同時に人殺しに思えてならないです」
男は地位が地位であったから、現場に行く機会は多くはなかった。本部での仕事が大半。
元々自主的に治安隊に属していた男にとってこれは運が良かったとは到底思えはしなかった。
「此度の防衛による死傷者……40名」
人と人ではない者、その力の差は歴然であり、フロレーヌ騎士団と違って練度もそのまとまりもないこのマリス騎士団はいつだって彼等の様な華々しさはなかった。
尤も、数多の血を双方で流している点は同じかもしれないが。
「それでも、貴方は守りたいものがありますか。騎士を名乗る者として……貴方は、殺さない。今一度、先に逝った人々を振り返りなさい」
秩序の御子はいつかそう語った。
男と家族の関係は普通だった、普通であるからこそ、守りたかった。そうした普通の関係を築いた人々が日常を作り、沢山生きている。そんな家族を持つ仲間達を何度も死なせに行った。
子を持たずとも、妻を持たずとも、人並みに弱きを守りたい心は持っていた。
「長官。この計画が上手くいけば、我々の世界はきっと救われますね!これで家族の元にも帰れます!」
『魔界の門にお前の魔力特性を…?いいや、そんな事をすればこの世界は──』
人々の期待と、悪魔の語る希望のない真実の狭間にて。
男は人並みに考え続けて、人並みの結論を出す他なかった。
彼は片棒を担がされた人間ではなく、最早その実行犯の側なのだ。
「違う!俺は金の為にやったわけじゃ……な、なんだその書類…ッ!?俺は違う、金の為なんかじゃ、本当に!」
真実の為に騙し、苦しめ、痛めつけもした。
後世の人間からはなんと言われるか、元フロレーヌ騎士団長シェード・ブラッツの様に冷血と称されるだろうか。
しかし彼ほどの事は為しておらず、半端者と称されるか。
どちらの評価も、決して嬉しいものではない事は確か。
「全ては……この世界の人々の為に」
男は最初から、第二の計画を失敗させる為に黙していた。