RECORD
Eno.53 オルヴァン・フォンスの記録
霧の時代の到来へ
「術の構築をしていた記録をそこから逆算しろ!」
「しかしそれを行ったとしても──」
「そいつのそれがあるだけである程度は可能なはずだ!良いからやれ!!」
オルヴァンは痛みというには生易しく、しかし痛みとだけ称するにはひたすらに熱いという感覚を伴って意識を取り戻してしまう。
(なにが……あった…?)
石床の冷たさと風と青い空がここをまだ現だと実感させる、オルヴァンの喉は正常だった。その代わりに片腕の感覚が…否、感覚ではない片腕そのものが──
(…なに、が……おきた……?)
身体中の血が流れ出て行こうとしているのではないかと思わせる程に石床は染まっていたからどれほどの時間の経過があったかはわからない。ただ、太陽の位置を見れば数分というほどに短くはなさそうではあった。
そう、何があったか。オルヴァンが自害をしようとした時、即座に短剣を持っていた片腕は短剣を2度と握れない様に。それは自害を止める目的以上に、術式を構築していた残滓のまだ残っているオルヴァンの腕を触媒にする目的があった。
「想定のものを呼び出せない可能性があります、座標そのものが想定よりズレるかもしれません!そしたら異なる次元から…」
「ええい!構わん!いいからやれ!これはもう使い物にならんのなら上手く利用するしかなかろう!!」
緊急事態である事には変わらない現状、怒声も、足音も、魔力の流れも、全てが混沌の只中である事は今のオルヴァンでもすぐにわかった。
当然だ、彼がこの様な形で失敗を図ってくるなど誰も想定していなかった、想定されない様にしてきたのだから。しかし、それ自体は失敗とはなったが…
まだ終わってもいない。
(………止め…なければ…)
自害をしようとした動機はこの計画を失敗させる為、まだ続いてる最中ならばその手段はいくらでもある。
幸いな事にオルヴァンに誰も意識は向いていない。彼が意識を取り戻した事さえも気づいてない程に、故にこの好機は一度しか訪れないとも言える。
「流れがこちらに徐々にですが向かって来ます!このままいけば──」
だがその言葉を遮る様に心臓に向けて、身体ごと突進する様に刃を突き立てている影があった。
「っ…ちょう、かん」
何人もの部下を何度も死にに行かせた人間が、今度は自分の手で。正義の行いか、否
「恨んで…くれ、俺を……」
ただ、オルヴァンは必死なだけだった。
「どこまでも邪魔を…ッ!構わん!その裏切り者の血を更に生贄に捧げろ!!!」
護衛として共に来ていた団員達が今度こそオルヴァンを仕留める為に術式を練り上げたその時、いやむしろその時だったからこそというべきか。
複雑な術の構築をしている最中に、魔力の波が複数出来ればどうなるか。そも、高次元にある神の存在する領域であろう座標を定めて転移を交えて呼び寄せるという術式には大きな欠陥があった。それは存在単体を呼び寄せるという事が指定が座標である限りはその場所毎を摘み上げて呼び寄せる事になるという事、その際に世界との境界が大規模な摩擦によって薄くなる事、そしてそもそもが観測した事もなければ人類にとって手の届かないその次元を本当に呼び寄せるなんて結局は出来ないという事。
何より、触媒が魔界の門であった事。悪魔達に近しい物であった事、そして魔界の門そのものが膨大な魔力で構成されていてそれを触媒として消費した事。
その結果どうなるかは
「た、大変です!魔力の大きな、奔流が!巻き込まれ──」
新たな破滅の時代を告げる様に。
(…英雄神テイアスよ…世界よ)
(頼む、どうか……俺達の愚行のツケを…人々が支払うなんて事が起きない様に)
(どうか)
(どうか──)
門が開かれる事となるのだった。
「しかしそれを行ったとしても──」
「そいつのそれがあるだけである程度は可能なはずだ!良いからやれ!!」
オルヴァンは痛みというには生易しく、しかし痛みとだけ称するにはひたすらに熱いという感覚を伴って意識を取り戻してしまう。
(なにが……あった…?)
石床の冷たさと風と青い空がここをまだ現だと実感させる、オルヴァンの喉は正常だった。その代わりに片腕の感覚が…否、感覚ではない片腕そのものが──
(…なに、が……おきた……?)
身体中の血が流れ出て行こうとしているのではないかと思わせる程に石床は染まっていたからどれほどの時間の経過があったかはわからない。ただ、太陽の位置を見れば数分というほどに短くはなさそうではあった。
そう、何があったか。オルヴァンが自害をしようとした時、即座に短剣を持っていた片腕は短剣を2度と握れない様に。それは自害を止める目的以上に、術式を構築していた残滓のまだ残っているオルヴァンの腕を触媒にする目的があった。
「想定のものを呼び出せない可能性があります、座標そのものが想定よりズレるかもしれません!そしたら異なる次元から…」
「ええい!構わん!いいからやれ!これはもう使い物にならんのなら上手く利用するしかなかろう!!」
緊急事態である事には変わらない現状、怒声も、足音も、魔力の流れも、全てが混沌の只中である事は今のオルヴァンでもすぐにわかった。
当然だ、彼がこの様な形で失敗を図ってくるなど誰も想定していなかった、想定されない様にしてきたのだから。しかし、それ自体は失敗とはなったが…
まだ終わってもいない。
(………止め…なければ…)
自害をしようとした動機はこの計画を失敗させる為、まだ続いてる最中ならばその手段はいくらでもある。
幸いな事にオルヴァンに誰も意識は向いていない。彼が意識を取り戻した事さえも気づいてない程に、故にこの好機は一度しか訪れないとも言える。
「流れがこちらに徐々にですが向かって来ます!このままいけば──」
だがその言葉を遮る様に心臓に向けて、身体ごと突進する様に刃を突き立てている影があった。
「っ…ちょう、かん」
何人もの部下を何度も死にに行かせた人間が、今度は自分の手で。正義の行いか、否
「恨んで…くれ、俺を……」
ただ、オルヴァンは必死なだけだった。
「どこまでも邪魔を…ッ!構わん!その裏切り者の血を更に生贄に捧げろ!!!」
護衛として共に来ていた団員達が今度こそオルヴァンを仕留める為に術式を練り上げたその時、いやむしろその時だったからこそというべきか。
複雑な術の構築をしている最中に、魔力の波が複数出来ればどうなるか。そも、高次元にある神の存在する領域であろう座標を定めて転移を交えて呼び寄せるという術式には大きな欠陥があった。それは存在単体を呼び寄せるという事が指定が座標である限りはその場所毎を摘み上げて呼び寄せる事になるという事、その際に世界との境界が大規模な摩擦によって薄くなる事、そしてそもそもが観測した事もなければ人類にとって手の届かないその次元を本当に呼び寄せるなんて結局は出来ないという事。
何より、触媒が魔界の門であった事。悪魔達に近しい物であった事、そして魔界の門そのものが膨大な魔力で構成されていてそれを触媒として消費した事。
その結果どうなるかは
「た、大変です!魔力の大きな、奔流が!巻き込まれ──」
新たな破滅の時代を告げる様に。
(…英雄神テイアスよ…世界よ)
(頼む、どうか……俺達の愚行のツケを…人々が支払うなんて事が起きない様に)
(どうか)
(どうか──)
門が開かれる事となるのだった。