Eno.426 柚子澤 零都

■ 第四日目後半 約束


五日目…まだ四日目??
まずい、記憶が混乱している
自分自身が信頼できない

皆に迷惑かけないように気を付けよう……

今日は魚が釣れなかった
まあ予想の範囲内だが先行きは不安
とはいえ、昨日の大漁のお陰である程度余剰はある
久々に腹いっぱい食った
バーバラスから動物の肉を貰った
食うのが楽しみだ

脱水と栄養失調で不調だったバイタルもだいぶ改善した
周辺調査に出るなら今なんだが
今日は雨だった
天候が悪くなると右腕が痺れ出す
右腕に花の刻印がある なんだ、これは

優しい光だ
まるで痛みが和らぐような

これに似た『呪い』を知っているような気もする
思い出せねえけど……


島の調査が済んだら、ケイから借りたイカダで少し海に出てみようと思う
それも天候が回復しないと、だな
今は海水を少しでも多く汲んで……真水と塩を……生理食塩水を作っておかないと
まだ余裕はある
大丈夫だ

薬が無いのが不安だけどな
手当の手段が無いより遥かにマシだ


バーバラスと話をした
自己破壊的な言動だけなら様子を見るしかなかったが
自傷行為を仄めかされれば、そうはいかない
全員無事じゃなきゃここで生活することも、脱出することも無理だ
運命共同体であることを伝えた

俺は、例え俺がどうなったって
みんなが無事にこの島から生還してくれればいい
俺には生きる理由なんてない
記憶が無いんだから

……七日おきに船が来るらしい
本当か? ボトルメールなら信憑性のある情報とは思えないけど
でもそんな希望にも縋りたくもなる
可能性として胸に留めつつ
脱出を最優先として動くことに代わりはなさそうだな

バーバラスを日本に連れていく
そんなことが出来るのだろうか
記憶のない俺に?

本当に船が来るならきっと可能だろう
身分証明書ならある……誰かが俺を待っててくれるのなら
きっとその人なら、助けになってくれるはずだ





……どうして思い出せないんだろう
どうして、一番大切なことが
一番、思い出せないんだ