Eno.300 リーアンダ

■ (キノコの後遺症で取り留めがなく、長い)

君に会えないから寝た気がしない。
ここが違う世界だと確信したのは、
夢を見ることができなかったからだ。

くっしーは俺の言った些細なことを覚えていて、
びっくりするやり方で実現してくれた。
手伝った子の見当もついてる。
本当に最高の景色だった。どうしていないんだ?
絶対俺と馬鹿笑いできたのに!

お礼に服を縫ったよ、骨針で。褒めてくれ。
足踏み式でもいいからミシンがあれば、
もっとお洒落な服にしてあげられたんだけどな。
限られた布を取捨選択して継ぎ接ぎで作るのは
かなり楽しい作業だった。職場を思い出せたし、
指も鈍っていないと確認できた。
エコが流行りだしたころのコレクションよりも、
この島で作る服の方が断然"リアル"だ。
あの全く理解できないって顔をしていた君の顔。
今思えば確かにその通り。

海路で行ったのは、山ほど注文を並べ立てた君の
お望み通りのドレスを作りたくて、
色々な実物を見てみたかったからなんだ。
それは俺の自己満足に過ぎないから、
喧嘩したとしても先に相談すべきだった。

ハクは俺を人たらしというけど……俺としては
くっしーのように他人の小さな願いを取り零さない、
努力と自制心のある人間の方が、
最終的に幸せにしあえる相手を見つけられる……
という気がしている。
ああいう男はもう少し年上になってからモテ始める。


彼ら青い鳥を探しまわってる。
ちょっと言いたいことはあるけど、
俺みたいなのがお節介を焼きすぎるのもねえ。
夢も幸せも願いも気配を追う所から始める。
自分で見つけてこそ楽しいもんだ。

プラシオからの返事はここにいる間ずっと待ってる。

「君の夢は何?」

俺も君と一緒に楽しくなりたい。


ええと?
…………そうだよ。
俺は俺の意志で、ずっとシリウスの荷物を
自分からは見ないようにしてた。
「そうしてくれて構わない」って、
彼が俺以外の人にやるのを見るまではね。
言葉、通じないけど……。

俺はシリウスに“俺以外の選択肢がない”みたいな状況は嫌だった。
だって俺は保護者じゃなくて相棒だ。
信じてるんだよ。
最善最良の我儘ができるってことを。
もちろんシリウスが普通の犬だったら
俺ももう少し保護者を気取っただろうけど、今回は絶対違う。

わからない?
オーケー、じゃあ次の話……


(リーアンダは島に来てからずっと、
 ここにいない相手に話しかけてから眠っていた)