Eno.300 リーアンダ - シマナガサレ

■ Eno.300 リーアンダ

「夢を見た」

STATUS

100 / LIFE

脱出 / STATE

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PROFILE

我儘な人間

眩しい濃い金の髪と瞳の陽気な男は、
アメリカで服飾デザイナーとして働いていた。
男はいわゆる「夢見る人」だった。
文字通りの意味ではなく、夢見ることで
現実世界とは別にある、幻夢郷に行ける人間だ。

いつまでも子供心を忘れない、
夢を見なければ生きていけない人間でもあった。
肉体的には30歳だが、夢の世界で過ごした年月は数えていないほど長い。

…………
……


初めはインスピレーションを得る為だけの眠りだった。
が、夢の世界で出会った魔女に恋をしてからは、
彼女に会うため毎晩夢の世界に行くことを求めるようになり、
やがて現実世界を去る決意をした。

海に落ちたのは。
肉体ごと彼女の世界に行く方法を探して旅し、
ついに方法を見つけ、帰る途中の人為的事故。

犯人に復讐など考えていない。
未だ若い夢見る人にそんな翳はない。
あるのは尽きぬ冒険心と果てない夢だけ。
いつか現実が恋しくなろうと後悔しないだろう。


──小さな手を握って行った。

その子供が大人になり、
願いが叶う日まで共に知と力を求めて。
ありったけの幸福と生きる術を授けて。
大人になるまであらゆる支えになり、
いずれその旅立ちを見送る。

君の願いはすべて叶いますように、と。



そしてやがて、幾度も訪ねてきた"魔法使い"
あるいは複数人が男の元へ漸う再び来たならば。
彼のよく知る男の面影のある子らが、
きゃっきゃと笑って出迎える。


「最期まで笑顔だったわ」


うら若いままの魔女はそうして語り聞かせる。
いかに幸福な日々であったか。
彼の話した漂流の物語がどれほど楽しいものであったか。
でも、と魔女は言う。
彼が頑なに話そうとしないことがひとつだけあったが、
それが何かを知っているかしら――と、問う声に被せ、
はしゃぐ子どもの声が響く。


「ようこそ、夢の世界へ!」


子供たちは、わあわあと両手を伸ばし、
笑いながら言う。


「一緒にあの灯台に向かって泳ごう!」

   「向こうにあるの」

「そういえば、お名前は?」

   「もう忘れたの、えーと」

「だって仕方ないじゃないか」

   「じいちゃんの話いつも長かったもん」

「プラシオの話の方が面白かったし!」


けらけらと屈託のない、無邪気な声は絶えずに続く。
雨の中、夢見続けた男に代わって、夢の中。



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PL
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