Eno.300 リーアンダ

■ ちゃんと灯をつけてるかい?

俺がこんな名前だということが原因で
君は全く俺とは海に行きたがらなかったし、
これまでも行こうともしなかったよな?

確かにそれは正解だったかもしれない。
もちろんここに居ないって意味でだけ!
本当に、君が泣いて悔しがるくらい
俺は楽しんでいる、ここでちゃんと。

たとえ船がなくたって、
灯さえあれば泳いでいける。
どんな荒れ狂う海の中でも。
たとえ死んでも身体は君の元へ流れつく。
絶対だ。
行方不明のままでなんかいるものか。


なぜなら俺はリーアンダ。
またの綴りがレアンドロスだから。

恋人に会うため夜ごと海峡を泳いだ男と同じ名前。
君があんまり好きになってくれない名前。
まあ、やつは溺れ死んだから仕方ないけど!

でも何度も言ってるけど、親父の名前はラザロだぞ?
もし俺が死んでたら、君が俺に奇跡を起こしてくれよ。
だいたい、君が自責の念で泣きながら自殺するなんて、
それこそ俺は信じてないからな。