Eno.426 柚子澤 零都

■ 第六日目 生存への意志


ケイの解呪聖水風呂(?)について相談をしていたんだが………
やっぱりケイは……妖精の獣人は、人間とは違う世界の生き物なんだな
仲間として信頼はしてるけど、正直……やっぱり怖いと思っちまった

早く脱出して
俺は日本に帰るべきだな!

とりあえず聖水風呂は中止になった
相談に乗ってくれたのに、悪かったとは思ってるよ……
でも怖いものはしょうがないだろ!!! ひぃぃぃ………

あ~、怖かった
小屋に逃げ帰っちまった……
倒れるように寝たお陰で、熟睡は出来た




朝だ
晴れだったら海に出ようと思っていたけど、雲行きが怪しいからやめておいた
雨が降らないことを祈って島の調査に行こう
筆記用具があれば良かったけど…ま、俺の字は俺にしか読めねえけどな

記憶力に不安はあるが
あくまで呪いのせいだ、脳の機能が落ちてるわけじゃないと信じたいぜ

じゃあ、行くか



調査完了
ここが孤島なのは間違いない
見渡す限り、大きな陸地は見えない
浜の北にある岩礁が第一の目的地だな
漁場の枯渇はずっと心配だった
岩礁でも釣りが出来れば、かなりの安心材料になるだろう

明日、晴れたらイカダで海に出よう
ようやく脱出への第一歩、って感じだな



みんなに魚を配ったり焼きイカをもちゃもちゃしたりしていたら
礼くんが
俺の周りに盛り塩を置いて
"人を救いたいという勢いを思い出して生きて
自分の命を守れ"、と
俺に言った(意訳)

俺は人を救いたいのにこんなに消えてしまいたいんだ
どうしてだろう
でもそれを思い出すのが怖い
思い出そうとすると頭の中で爆発音がする
右腕が痛む

そして礼くんは言った

「柚子澤零都、海に近付くな。近付くとカオルさんに……あんたの娘に呪われて死ぬ。」

真っ先に頭に昇ったのは
俺の家族を侮辱されたという怒り
そして次に
恋人への申し訳なさと愛情

"カオル"という名で
俺は全てを思い出しつつある


俺が娘を失ったこと
失ったことをきっかけに、大事故を起こしたこと
人生が破滅したこと
再起を図ろうとしたこと

そして
死のうと思った旅先で
大切な人に出会ったことを


高熱のなかで
ただ、忘れたことを
謝ってた

そして

カオルがまだ俺を
必要としてくれていることが
嬉しかった