Eno.426 柚子澤 零都

■ 第一日目 俺は誰だ俺は誰だ誰だ誰なんだ




何も思い出せない



財布の身分証明書
『柚子澤 零都』『35歳』『鎌倉市在住』
俺がわかることはそれだけだ
スマホは電源が入らない
水没したせいだろう
救命ケースを持っていた
一度だけ、誰かを救うことが出来るだろう



一度だけ



遭難したら第一に乾いた寝床、そして火の確保
その次に水だ


それだけは身体が覚えている

森で火を起こそうとしているときに歩く狼のケイと出会った
最初はびっくりしたが優しそうな男だ

小屋の建設中に礼くんと出会った
手伝ってくれた
心が強そうな聡明な人で、頼りになりそうだ

森の小屋建設疲れで水不足になり脱水寸前で水を飲んだ
とても美味しかった
ケイから借りた寝袋でぐっすり寝た

起きた
バーバラスとすれ違った
そのとき俺は草を食っていた……とても不味かった

雨が降った
雨水を試しに飲んでみたら美味しかった

おおきないもむしを、見かけた
くれたイカのお礼にあげられるものが指輪しかなかった
魚を釣るぜ!

無茶して魚釣ったら倒れる寸前だ
バーバラスに焼き魚をあげたらすごく×××××なことを言われたので
頭がぼーっとした
そういうのはいけないぞって怒るべきなのか?
よくわかんねえ
よく思い出せない

歳を聞いたら未成年だったからハッとして止めた
未成年はだめだ
大人は子供を守らなきゃ
守らなきゃ
守らなきゃ
守らなきゃ……


……?





何よりも、まずは連帯だ
だが俺は自分でも意外なほど人見知りだ
見た目と中身の感情のギャップを無意識に殺している
脳に染みこませて覚え込んだ習慣のように
俺は……
柚子澤零都という男は


おかしい
何なんだ、この違和感


…………今は多少無茶をしてでもやるべきことがある
倒れる寸前を見極めるのがうまくいかない
俺の記憶が無いせいだ
悔しい


俺は誰なんだよ
名前だけわかっても
何のために生きて来たのかもわからない
なぜ生きてるのかわからない

×る意味×あ××か?
それって