Eno.267 ジューダス・G・パルロンティヌス

■ 日記

久方ぶりの命酒を得た。あまりにも、突然だったけど。
甘く深く美味なるコレを人間は鉄錆の味と匂いがするらしい。
私には理解できないが、そういうものだから仕方ない。
我々にとって流水や太陽を恐れる祖と祖に近しい種のように。

つい、眼を赤くしてしまった。

……恥ずかしい。本当に恥ずかしい。
追放された後でよかった。もしこれが実家だったら……。

問題は一つだけあるが、伝えていない。
彼の命酒の味を知った今、おおよそ把握できてしまう。
けれど、彼は人間として生活しているのだから、
わざわざ波風を立てる必要もないだろう。

――魂。我々にないもの。次なる生を約束されたものの証。
兄は元気にしているだろうか。無事望みを果たせただろうか?
できなければ多くの命酒を得た兄の罪を被った意味がないが、
どちらにせよ、兄は今の生で望みを叶えることはできない。
人間との恋愛を叶えたいのなら、来世に期待するしかない。
来世を得るために多くの命酒を得る。……まさに祖の罪だ。
願わくば、兄が人になれますように。

私は魂を得たいと思ったことはこれまでなかった。
この島で暮らすうちに得た望みは、叶うことはないだろう。
私が欲するのは、彼らと共にたった一枚の写真に映る。
たった、それだけ。だが、それがとても難しい。

だから、覚えておかなければ。
日々を。数日間で得た友の顔を。