■ 前日譚・会話記録
「また、あの女のところに行っていたの?」
「嗚呼、びっくりした。……████か」
「家を抜け出すのは私が一番得意だからね。見つけるのも得意ってことさ」
「……で、どうだったの?」
「……余命幾ばくもなさそうだ」
「そう。……人間は私たちよりもか弱いものね」
「……そうだな」
「ここ最近、街で噂されてる通り魔ってさ。兄さんだよね」
「……」
「兄さんが祖の罪を知らないとは思えない。でも、する理由があるんだろうなとは思う」
「だから、教えてくれないかな。どうして無差別に吸血行為をしているのか」
数日後――
「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけどね……」
「あはは……」
「ここまで馬鹿だとは思っていなかったわ。貴方には明日、判決が下るでしょう。罪人の烙印を押され、真名を消され、アリスと呼ばれて首を落とされるに違いないわ」
「そうだね。まぁ、精々残る数日を好きに生きていくよ」
「本当のことを言いなさい!」
「嘘はついてないよ。私が飲んだ」
「……本当に、馬鹿な子」
「ごめんね。……ねえ、母さん」
「……なに?」
「私がアリスになる前に、もう一度だけ、名前を呼んでくれないかな」
「……本当に馬鹿な子」
「それくらい、いくらでもしてあげるわ」
「ジューダス」