Eno.267 ジューダス・G・パルロンティヌス

■ 前日譚・会話記録

「また、あの女のところに行っていたの?」


「嗚呼、びっくりした。……████か」


「家を抜け出すのは私が一番得意だからね。見つけるのも得意ってことさ」


「……で、どうだったの?」


「……余命幾ばくもなさそうだ」


「そう。……人間は私たちよりもか弱いものね」


「……そうだな」


「ここ最近、街で噂されてる通り魔ってさ。兄さんだよね」


「……」


「兄さんが祖の罪を知らないとは思えない。でも、する理由があるんだろうなとは思う」


「だから、教えてくれないかな。どうして無差別に吸血行為をしているのか」



数日後――

「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけどね……」


「あはは……」


「ここまで馬鹿だとは思っていなかったわ。貴方には明日、判決が下るでしょう。罪人の烙印を押され、真名を消され、アリスと呼ばれて首を落とされるに違いないわ」


「そうだね。まぁ、精々残る数日を好きに生きていくよ」


「本当のことを言いなさい!」


「嘘はついてないよ。私が飲んだ」


「……本当に、馬鹿な子」


「ごめんね。……ねえ、母さん」


「……なに?」


「私がアリスになる前に、もう一度だけ、名前を呼んでくれないかな」


「……本当に馬鹿な子」


「それくらい、いくらでもしてあげるわ」



「ジューダス」