RECORD

Eno.7 瀬波 りり子の記録

私は

"私"はアンドロイドだ。
さまざまな世界の技術の結晶、
ヒトが作る機械のかたちの行き着く先、人造人間。

それは、ヒトを再現できる。
それは、ヒトらしく歩くことができる。
それは、ヒトらしく話すことができる。
それは、ヒトらしく戦うことができる。
それは、ヒトらしく歌うことができる。
それは、ヒトらしく考えることができる。

それは、ヒトとは違う形で殖えることができる。



だが、"私"はヒトではない。
ヒトにとってアンドロイドが何であるかにせよ――
それを良しとする者以外の前では、アンドロイドらしくあらねばならない。

"私"は、ヒトを再現しない。
"私"は、ヒトらしく歩くことを選んだ。
"私"は、ヒトらしく話すことを選ばなかった。
当機は、ヒトらしく戦うことを続ける。
当機は、ヒトらしく歌うことができる。
当機は、ヒトらしく考えることができる。
当機は…………



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私は高校生だ。
私はヒト。
私の名前は瀬波りり子……

でも、
"私"はアンドロイドだ。

私はヒトのようには驚けない。
私はヒトのようには笑えない。
私はヒトのようには……えっと。クマを狩れない?
違った。
私はヒトのようにはお花を摘めない。

私はヒトたちの間ではヒトでいられない。



アンドロイドらしいほうが喜ばれるからと、
ずっと長い間そう振る舞ってきた。
一人称は当機、表情は基本なし、二度見もしない、揺らぎもしない。

そんなヒトはいない。

でも、私はヒトをやらなければならない。
この世界にアンドロイドはいない。
この世界に当機は存在しえない。
この世界に神秘はない。ということにしなければならない。
当機は神秘だ。
神秘は隠すものだ。
私は隠れているわけにはいかない。



私は、ヒトを再現する。