RECORD

Eno.297 鈴峰瑞香の記録

ボロのアパート

 
築五十年。
意外と駅に近くて、安いボロアパート。リノベーションされてなかったら、住む気も起きなかっただろうそこ。
フローリングに絨毯を敷いて、僕の思うかわいいを敷き詰める。そうすれば、ちょっとは見れる部屋にはなるかな。もちろん、いい匂いだってさせる。古臭いにおいとかゴメンだから。
誰かに見せる事も無いけど僕が満足するための、僕の部屋。ぬいぐるみは山ほど積んである、僕の日常。

あれから、結局学長と話をする事になるとは思わなかった。
初手から市長秘書とか、出てきた時点でと考えておくべきだったかな。あれなんだよ。僕の知らない世界の規模感が全然つかめないって言うか。
大企業のカレントコーポレーション、国の神秘管理局、それから、裏世界のアザーサイドコロニスト。そう、思えば裏世界って裏側にあるもう一つの世界でさ。
でも現代を生きるのに、それだけで手一杯なのにそれがもう一個増えた気分だった。

瑞香
「とか、大層な自覚あるわけねーじゃん」


世界がどうとか、日常がどうとか、そんなの言われて腑に落ちる? 無理でしょ。
僕にはクラスメイトと喫茶店に行ったり、バ先探したり、後輩と水族館行ったりで手一杯なんだって。
大体、大きなことは大人のみなさんに任せて、僕みたいな一学生は大人しーくしておくのが普通だ。できる事とかなんだとか、抱え込める程度は、知れている。
学生としての日常を疎かにしないようにとか言われた気もするし、言われなくてもそうする。

喫茶ひなたのご飯は美味しかったな。事前のリサーチをしてなかったせいで、あそこがデカ盛りだと知らなかったけど。
ちゃんと調べておけば良かった。店員さんが予め言ってくれなければ、ぼくもくまさんハンバーグを普通に頼んでいたと想うし。
でもくまさんハンバーグはかわいかったな〜、今回は食べなかったけど、次はネコドーナツも食べたい。サイズの割に財布にも優しいし。
お腹すいてる時の救世主、って感じ。

バ先はー……どうなるかな。今度体験入店で1日様子見させてくれるらしいけど、なんか向こうもやれるものならやってみろとかそんな雰囲気感じたし。
僕の事を見てくれるのは嬉しいけど、値踏みってされて嬉しい人はあんまいないと思う。いや、バ先にしろ就職にしろ、値踏みされに行ってるんだけどさ。
上手く面接? が上手く行って決まれば良いんだけど。駄目なら僕のご飯は霞コースだ。

水族館も、良かった。ペンギンフロートを食べに行ったけど、展示されてる生き物が多かったし、普通に水族館としても楽しめた。
イルカショーも見れてよかったな。別に遠い訳じゃなくても、機会が無いとこういうのって行かないし。
ペンギンフロートは美味しかったし、ぬいぐるみも持ち帰った。ちっさめの白いアザラシ。ゴマフアザラシだっけな。


そんなこんなで、本を置いている棚の上に、新しく追加。うん、かわいい。買って正解だった。
今日も明日もかわいい、ぼくの部屋。僕の日常。ボロアパートのボロを隠して、いつも通りだ。

瑞香
「あ、やべ」



部屋の隅に、壊れたぬいぐるみ。これがあるから、いくらぬいぐるみを買っても山積みにならないんだよな。
直せるものは直すけど、駄目な時の方が多い。これも、駄目かな。


アザーサイドコロニスト。今日から増える、僕のもうひとつの日常。