RECORD

Eno.46 篠目 樹の記録

act 1

自分が捨て子だと気付いたのは小学生になってからだった。
でも特に己は不幸だとか、悲撃の中に居るだとか、世界を恨むだとかそういうことは全くしなかった。一重にマザーの教育のお陰だった。

マザーというのは捨てられた自分を拾ってくれた人で田舎の教会を切り盛りする女性だった。教会前に捨てられてた自分を見たときには酷く驚いたそうな。
其処から中学生三年の冬に入るまでずっと面倒を見てくれた。里親と言って差し支えない。
血の繋がらない自分を一生懸命育ててくれて、時に悪いことをしたら叱ってくれ、時に良いことをしてくれたら褒めてくれ、そんな普通の親として接してくれた。

一度、どうして自分を育ててくれたか聞いたことがある。単純な興味も有ったし、捨てられる不安も有ったのかもしれない。

『天使様が貴方を私の所へお導きして下さったから……と言うのが建前。
 救える命を、芽生え育つ子供を助けない大人になりたくなかったから、と言うのが本音です』

そう言って頭に乗せられた掌は誰よりも大きく、誰よりも暖かい気がした。


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「此方は元気にやってるよ。
 親父さんは相変わらず家空けがちだから体が心配になるけど」


「帰省は~……どうかな。……いつでも良い?分かった」


「友達?出来た出来た、そりゃもう沢山……え?信じる?声で分かる……怖……」


「うん、そろそろ切るね。……あぁ、そうだ」


「育ててくれてありがとう、母さん」