RECORD

Eno.350 竜胆 棗の記録

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「助けを求めてる奴がいるなら人だろうがそうじゃなかろうが助ける、それがこの世界で一番カッコイイ生き方だ」

 俺を拾った男は事ある毎にその言葉を口にしていた、その言葉は不思議と説得力があって、まるで「正義の味方」の体現みたいなその男に俺は憧れていた、父親代わりとも呼べるその男の後を追っていけば自分もああなれると思っていた。
 
 でもそうはならなかった、俺が十一歳になって少しした時、難しい依頼だからと友人家族に暫く、預けられることになった。

 勿論俺も一緒に行きたいと言ったけど、「もっとお前が強くなってからな」
 とそう言われて渋々留守番することになった。
 1週間くらいの依頼になるはずだと聞いていたけど結局1週間経っても帰ってくることは無かった、1ヶ月経った時にようやく、父親の訃報を聞くことになった。
 女の子を怪奇から守って死んだのだと聞いた、栄誉ある死だったと。
 
 だけど、俺はそうは思えなかった誰かを助けるのは良い事だが、それで自分自身が死んじゃ元も子もないだろ、俺は例えその女の子を見殺しにしても父親に死んで欲しくはなかった、ただ1人の俺の家族だったんだから。
 けど、あの男はきっとどんな状況だろうとそうしたんだろう、そういう奴だって俺は知っている間近でずっと見ていたから。
 
……もし、あの時俺がもっと強ければ役に立てたのだろうか、父親を助けることが出来たのだろうか。

 その後俺は父親の友人一家に引き取られ一緒に暮らすことになった、あの一件以降荒れてた俺を叱ってくれて、家族として見てくれていた人達を……俺はまた助けることが出来なかった。

 そして今、家族も居場所も全て失って、もうあの時みたいに「正義の味方」に憧れることも出来なくなってしまった。

俺はこれからどうすれば良いのだろう、自分でもどうしたいのか分からない。