RECORD

Eno.232 月影誠の記録

5/13

学校に行く少々の気まずさを覚えた。
昨日は上手く誤魔化したつもりだけど。
普段明るい人間が妙な行動を起こしたと思われたかな。
何事もない日常がそこにあればいいんだけどな。


なんて。
関東のカタツムリを見かけてそれどころじゃなかった。
あれ絶対ミスジマイマイだって。
絶対ハリママイマイじゃなかったってミスジマイマイだって。


で、まあ。
遅刻しました。しかも買ったご飯を忘れていきました。馬鹿野郎。


教室では方言の話や生き物の話をして。相変わらずミドリが暴走していて。
正直そろそろ恋愛的なサムシングがトラウマになりそうなんですけど……

後は大体皆いつも通りで、特に恐れていたこともなくって。
皆が平穏に、それぞれの元でそれぞれの時間を過ごしている。
理想の日常が築かれていた。

あとカナタから凄い間抜けな顔のザリガニのぬいぐるみを貰った。
俺はザリガニが好きなんじゃなくってザリガニ釣りが好きなんだけどな……

ぬいぐるみを手にするのは初めてだった。
柔らかく、ふわふわ。思ったよりも手触りがいい。
部屋に置いて、飾ってみる。
俺が好きだと思って取ってくれたらしい。
一転。俺には勿体ないくらいのプレゼントだ。

嬉しいな。

……嬉しいんだよ。間違いなく。

だけど、これはあくまで人から向けられた感情への感謝と喜色だ。
ぬいぐるみに対しての興味は『やはり』湧かない。
分かっていたけれど、『生きていないもの』には興味が持てないのは相変わらずで。
それがどうにも、空しかった。




夕方には身体を動かしたくて裏世界に行った。
クロに手合わせを頼んで、命のやりとりを行う。
一歩間違えれば命が吹っ飛ぶ。向こうは本気で来てくれている。
自分がこの程度では殺されないと分かっているから。
あぁ、あぁ! 対等で渡り合えることのなんと楽しきことかな!!


その後は散歩で裏世界を歩く。
北摩湖があったところには螺旋城と呼ばれる場所があり。
随分とアングラで治安の悪い場所だと察した。
付近にいた2人の怪異は優しかったけれど、この場所に過ごすには最適な怪異だったな。
本当に居心地が良さそうで。
やりすぎなければ『狩り』を行ってもいい。
入り浸ったら、戻ってこれなくなりそうだな、なんて。



―― クロが居てくれるおかげせいで、今はまだ人間を名乗ることができる





「―― 優しい俺と、殺したがりの俺」


「どっちが『俺』なんだろうな」


分かっているくせに。