RECORD

Eno.83 大御門 錦慈の記録

咎抜き




ほんの些細な行動規制
何を恐れているのかは不明だが
不意に訪れる道間違いは
誰かの願いを叶えることにおいて
場合によっては致命的なほど邪魔になる

1日にこなせることには限りがある
それ故に断らなければならない願いがある

阻害されることによって生じた些細な遅れが
今日は一つの願いを断らせてしまった

それは流石に看過できない

自分に身に何が起ころうがどうだっていいが
そのせいで誰かの願いを蔑ろにするだなんて

そんなこと絶対許してはいけないことだ

だから


「……悪いけど無理矢理にでも
 外させてもらうよ。」



誰かにいうわけでもなく
ひとり洗面所前で呟いて

胸を抑え咳を1回、2回

ズキ、と痛むものはあるが
気にしないでまた咳をする

ズキ、ズキ、と胸が痛む

暑いわけでもないのにぽたりと
汗が頬を伝って落ちた


「……ッ!」


──カランと音を立てて
釘のようなものが洗面台の中に落ちた



息を吐く
息を吸う

洗面台に転がる釘を
指で圧し潰して折る


「……。」


「よし、これで問題解決だ。」


「彼らには悪いけれどこうでもしないと
 いつか何処にも行けなくなりそうだったもんね」


「別の形の枷……咎を考えてもらわないと」


「僕が他人の願いを叶えるっていう行動を
 誰にも邪魔させるわけにはいかないし、ね。」