RECORD

Eno.251 鳴宮優希の記録

【5.迷子の先へ】

 
 気になることがあったから、
 特務心装部に相談に行ったんだ。

 あの日、僕のメタフィジカは、
 どうして僕を拘束したのだろう?
 そんなんじゃ、戦えないのに。

 和泉先輩は、僕に問うた。

『……優希は今……
 何かが欲しいと思って行動しとるか……?』


 欲しいものなんてないよと答えた僕に、
 先輩は、言ったんだ。

『欲望とは、生きとし生ける者の力だ。
 必死さの度合いはともあれ、欲しい物のために
 走る事が、生きている証だ』


 …………。
 なら、なら、空っぽな、僕は。

──生きていると、言えるの?

 分かんなくなっちゃった。
 僕が“好き”を言っても。
 お母さまは、否定しかしなかった。

 奏翔がいた。宮瀬先輩がいた。
 新しく、至藤先輩という人も来た。
 みんなで、色々な話をした。

 その中で、考えて、感じて。

「……手探りでも、一歩ずつ」


 僕の“好き”を見つけていこうと、思うよ。

 一部の認識が改まった。
 僕は何かを好きになっても良くて、
 僕は別に悪くはなくて。
 この場所でなら、“好き”を主張しても、許される。

「……なら、ここでぐらいは」


「……もっと、“好き”の話をするよう、
 意識して……みよう、かな」


 ここでなら、許されるんだろう?

『君は君でいていいんだ』


 宮瀬先輩の言葉のお陰で、ちょっと息が出来た。

 “正しい”には色々あると、至藤先輩が教えてくれた。
 納得のいく“正しさ”を探してみれば良いと、
 先輩は僕に言った。

 お母さまだけが“正しい”のではないと知った。
 様々な価値観に触れて、知って、
 ちゃんと“僕”を見つけないと。
 ……そうしたいから。

 奏翔と約束をひとつした。
 今は苦しくて言えないけれど。
 いつか、君に僕の最初の“好き”を伝えること。
 優しい奏翔。隣でそっと背を撫でてくれた君。
 一緒にいると落ち着く。痛みも苦しみもマシになる。
 そんな君が、僕の“好き”を知りたいって、言ったから。

「──約束」


 いつか、いつか、君に。
 互いの“好き”を分かち合えたなら、
 それはきっと、とても楽しいことだから。

  ◇

 色々と得るものの多かった相談だった。
 特務心装部の皆さん、そして奏翔には感謝がいっぱいだ。

 ほんとうの自分、見つめ直せ。
 この際、お母さまは、置いといて。
 罪悪感も、仕舞っといて。

「…………僕は」


 ゆっくり、ゆっくり。
 その答えを、探しに行こう。

 たとえ、今が迷子でも。
 道はみんなが照らしてくれる。