RECORD
2. 優しい言い回し + 直接言っちゃう優しさ
……
……………
ガリガリッ。
「組織と自分とで意見の食い違いがある」
「3」
「活気がわいてくる」
「1」
「怒りを感じる」
「4」
「納得できないことがある」
「……3」
「自分は人よりも優れていると感じる」
「3、いや2」
「自分は特別だと感じる」
「4」
「自分が特別なものを選べると感じる」
「4」
ガリガリガリッ、ガリガリ。
ガ、ガ、ガ……。
(……この人、筆圧強いよな……)
神秘管理局の静かな個室に、ふたりはいた。
棚町ミヲが、アンケートに口頭で答える。
神秘管理局の先輩であるナレッジが、それについて用紙に書き込む。
それをしばらく繰り返す。
「書き終わった。以上だ。質問や相談したいことがあれば言え。」
「あ……いや、えっと、ないです。」
「お前の不安をすべて解消するのが私の仕事だ。ひねり出してでも言え。」
「……じゃあ。
質問、毎週違うんですね?」
「毎週じゃない。昨日から、チェック用紙のフォーマットが変わった。」
「あ、ふーん。それだけです。」
……。
完全な沈黙。
ボールペンで紙をひっかく音も、もうしない。
「……それは……全員共通の?それとも、」
「お前に使うチェック用紙が変わった。
お前を保護してから数日の間は仮の方針を用いていたが、
それが最適ではないことがわかった。なので、用紙を変えた。」
「あぁ……。」
……。
「……何かよくないことをしたのなら、」
「無用な心配だ。お前はむしろとても出来がいい。
自覚はないだろうが、神秘管理局から見たお前はかなり印象がいいんだ。
協力的で、非暴力的、なによりポジティブなのがいい。」
「大量に人間が裏世界に入ってくる最近の事情は少し違うが、
お前のようなケースの多くは、暴れたり、逃げたり、不安定になったりする。
やむを得ず、我々は前話したような"次"の手段を探すわけだが……」
棚町ミヲは、自分を手の甲を握って、捻るような素振りをする。
本人に自覚はない。
「お前の保護方針が変わったというのは、そうではない。
お前の力が最初想定したより強いもののようだから、
それを制御するサポートの準備が前もって必要になっただけだ。」
「私はそれを"評価が上がった"と表現する。お前の素行がいいうちはな。」
「……なんでもいいけど。」
「その、"保護"って言い方、どうにかならないんですか。
私、守られてるってあんまり思えないんですけど。」
「あるよ。"保護"以外の言い方も。」
「でも、嫌だろ?」
……。
「まぁ、そのうち納得するような保護があるだろうよ。
裏世界では神秘の影響力が強くなるんだ。
入って間もない今はまだ自覚がないだろうが、そのうち自覚できるほど強くなる。」
「棚町。私はね、お前が局のサポートなしにそれを制御できるとは思わないよ。
恩恵を受けるのも、私たちが味方だとわかるのも、これからだよ。」
その日一日、棚町ミヲの手の甲には爪の跡が残った。
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【今回の要約】
・ナレッジさんの筆圧はやたら強い!
・棚町ミヲの素行はいいかんじ!神秘管理局の評価も高いぞ。
・棚町ミヲの力は、裏世界では本人が思うよりも強いかも?
・棚町ミヲは、不安になるとジャム瓶の蓋を握りたくなる。