RECORD

Eno.279 葦原奏翔の記録

8:親も親なら子も子【葦原奏翔】

奏翔、家に帰宅後の事―――

「ただいま」



詩音「お帰りなさい、奏翔
最近よく遅く帰るようになったわね」

キッチンで家事をしながら帰ってきた息子を迎え入れる母

「まあ…友人の事で色々と駆け回っていたから、かな」



ピクッ

詩音「友達?其の話、詳しく聞かせてちょうだいっ
貴方ー、貴方ー!奏翔に友人出来たんですってー!」


「いやいやいや、そんな大袈裟な事!?」



"だってもう何年か以来のお友達でしょう?お母さんもお父さんも気になっちゃうじゃない"
ツッコむ息子を他所に母親はふふふと楽しげに笑っていた
此の後、何か大興奮な母親が父親をリビングに召喚してしまったので
彼は両親に友人の事や抱える問題を洗い浚い語る事にした






詩音「うーん、その鳴宮優希ちゃんって子が母親から精神的、肉体的、教育的な虐待を受けていて
彼女がもしかしたらその母親から逃げるかもしれないからその時は匿ってほしい、と
そういう事ね?」


「えぇ…まあ、そういう事で
急な話でごめん…けど、このままでは友人を救えない」


救いたいんだ、と真っ直ぐ2人を見る
その目から
最近、ずっと遅くなっていた理由から覚悟を感じ取ったか両親は互いの顔を合わせて頷いた

奏一郎「そういう事なら、私達も協力しよう」

「…本当に?父さん」



急な頼み、それでも聞いてくれるのかとびっくりしながら2人を見る

奏一郎「ああ、其れがお前の本当にやりたい事ならば協力や応援するのが親の務めだ
…我慢強く、一人で何でもやろうとしてきたお前から頼られるのには驚いたが」

"漸く、お前の力になれるようだ"なんて安堵した様子で息子を見ていた

「それに関しては本当にごめんと思ってるよ…迷惑や心配掛けたくなくて………」



奏一郎「なら速やかに私達に頼りなさい
中学のあの時、私達がどれだけ心配したと………」


「うぐ、はい…はい本当にすみません、心配かけて


中学時代の誹謗中傷してきたクラスメイト達による謝罪ラッシュの事で彼の状況を知った両親は此処ぞとばかりに其れを蒸し返して滾々と説教を繰り広げた
そうして言いたいことは全て言い合えた双方
その後はと言うと―――






奏一郎「ふむ、ならば匿った後に母親が探しに向かうかもしれない懸念があるな
自分の娘が自分に逆らったとなれば逆上して追いかけてくる懸念がな」


詩音「そうねえ
あ、貴方…その鳴宮って子の家は分家らしいじゃない
だったら『本家』の方の連絡先調べておけばいいじゃない?
だってその母親は本家の後継にえらく執心してるわけでしょう?」

此れをぜーんぶ本家の方に報告したらその母親がどうなるか見たくない?とそれはもう楽しむような様子で父の耳元で囁く母が居た

「母さん????」



奏一郎「なるほど、いいね
それは
流石、詩音…こういう時に頼りになる
何ならボイスレコーダーとか隠し持って彼女がボロを出すのを待っているのも良いかもしれない
物的証拠があれば更に信憑性が上がるからね…まあ、その優希ちゃんが負った古傷の写真だけでも問題ないと思うけど
まあ、何か言うようならそれは平行線だから第三者、仲介者として本家の方々を加えて話をすると言えば彼女も何も言えなくなりそうだよ」


「父さん????」



詩音「そうね、私達は保護してるだけだし訴えようものなら本家の方々や警察にも洗い浚い真実ぶち撒けたらいいと思うの
まあ、そんな度胸があるなら自分自身で後継を否定した本家に反逆くらいするわよねぇ
あ、本家の方々と話し合って優希ちゃんの引き取りの許可も貰いたいわね〜自分の娘が手の届かない場所になんて事になったら…"その母親の16年間…否、其れ以上の年月に一体、何の価値が残るんでしょうね?"」



親も親なら子も子、逆も然り

間違いなく血は争えない親子なんだとまざまざと見せつけられてしまった奏翔は一人
友人の母親対策やあわよくばその母親に灸を据えさせる方法を仲良く楽しげに話し合う二人を半ば引きながら見ていたという―――




【葦原奏翔】