RECORD

Eno.156 都敬 柊の記録

ついた場所

再び踏み入った裏世界。
手袋越しに繋いだ手の感触がまだ肌に残っている。
ずっと機関を訪れるのを先延ばしにしてきたけれど
あんな風にいつ迷い込んでしまうかわからないのなら、神秘との関わり方、身を守る術を学ばなくてはいけない。

だから話を聞いて回ることになった。
震えも動悸も冷や汗も止まらなくて、やっぱり帰りたいと何度も思ったけど
隣にちぐさちゃんが居てくれたから最後まで歩けた。


局長の言葉も、CEOの言葉もどちらも理解はできる。
世のため人のためというのは立派なことだし
効率と利益を追い求めるからこそ技術は発展するものだ。

でも私はそこに自分が居る光景を思い浮かべることができなかった。
大きな機巧の歯車のひとつ。それにすらなれないような。

最後に訪れたコロニストの拠点は裏世界の住人のコミュニティ。
私にとって一番怖いものが集まる場所だと始めは感じたけれど
代表を名乗るひとの話を聞いて、その印象は塗り替えられた。



『君に宿る神秘を我々は理解し、それを活かす場を用意することができる』



心の奥にぴったりと嵌まるみたいだった。
私が欲しかったのはこの言葉だったんじゃないかと思えるくらいに。
無数に表示されるモニター、焚き火の爆ぜる音。
現実味のない焼けた空の色が満ちる空間に、居場所を見出してしまった。

私は理解してもらいたかったのだろうか。
──手袋の下が疼く。

神秘に関することは誰にも言ってはならない。家族にすら。
一人で抱えきれなくなりそうだったものを、
これからは此方の"家族"になら言うことができる。
──手袋の下が痛む。

伝えるにはまだ時間が必要だろうけど、いつか。
──手袋の下が焼けるように熱い。

「私、は………」










『────君の決断を歓迎する』