RECORD

Eno.295 ーの記録

6.想起。

これは姉が帰る少し前の話。姉が言っていたこと。

「どうせ後で知るだろうし、興味本位でアイカは絶対行くだろうから、先に伝えておくね」
「なに?」
「前も軽く言ったと思うけど。この世界には裏世界、って呼ばれる場所があるの。
 そこには多分、アイカの力を使えば簡単に行けると思う」
「そうなんだ」
既に行った、などとは言えない。

「怪奇と呼ばれる普通の人間とは違う存在が居る場所だね。
 いいのも、悪いのも居る。それはまぁ、人間と同じだね」
「悪い人間ほどタチの悪いのはないけどね」
「……アイカ」
「特定個人の名前出してないしいいじゃん」
「お姉ちゃんにとってはみんな等しく大事な妹です」
誰とまでは言ってないんだけど。
姉がじぃ、とボクの方を睨む。本気では怒ってないらしい。

「……話を戻すね」
「うん」
「やばい怪奇は本当に危険だから。危なそうな場所には近づかないこと」
「ん、わかった」
姉の言う危険、とは本当にそのままの意味。命の危険を意味する。
だから素直に守ろうと思う。ある程度は。

「裏世界を軽く覗く分には、お姉ちゃんにはアイカを止める権利がないから止めない。
 どうせ、嫌でもいつかは裏世界には行くことになるんだろうし」
「そうなんだ」
「この世界でアイカが生きていくなら、ね。きっと必要なことだと思う」
「そっか」
いつでもボクは時空渡りができるとはいえ。
「……この世界には、もう少し居たいかな」
せっかく友達もできたのだ。
それをなかったことにするのは、もったいない気がして。
「珍しいね、アイカがそんなこと言うなんて。
 アイカならこんな面倒な世界、すぐにどこかに行くと思ってたけど」
「きまぐれだよ」
「きまぐれでも、お姉ちゃんは嬉しいかな」
姉はきっと全部わかってるのだろう。
だってお姉ちゃんだから。
「それならお姉ちゃんはもう何も言いません。
 その人たちを悲しませないように、気を付けて動くように」
「そう、だね」
「世界がいくつあっても、アイカの命はひとつしかないからね」
「……そう、だね」

……そうなんだろうか?
姉と会話を終えた後、一人で考える。
もしも、ボクが居なくなっても。
別の世界のボクは生きてるわけで。別に問題はないんじゃないかな?
……なんて言うと、姉に怒られそうなので。それは心の中に留めておく。

……変なこと考えてるな。お姉ちゃんが帰っちゃうのが寂しいせいかもしれない。
思考を放棄して、WaveDでも眺めることにした。