RECORD
天体観測_06


担当者──転会さんの話は、ふつうの人が聞くときっと、回りくどいと評されるものだ。
ただ、自分には何となく、よく馴染んだ。
この人は、誰に対しても同じように、情より理屈を優先して接するだろうから。
友達とか、そういう間柄でなく、ちゃんとした仕事関係の人として見れる。

「時に、灰原様」
「ご学友様との会話の中で、ご自身の診断結果について」
「触れたと仰いましたね」

「え?えっと、はい」

「………………」
「これまでの言動を鑑みて、灰原様には」
「一般教養的な知識、またそれを前提とした言動の構築ができていない。
そう見受けられます」
……そんな相手から告げられたのが、これだから、
少しだけ怖い気もしたけれど。

「まず総括して結論から述べますと」
「私から灰原様に、身に着けてもらいたいものがございます」
彼女は意にも介さず話を続けた。
ホワイトボードには、大きく二文字。

「こちらです」
彼女は堂々と言った。

「意図も併せて説明します」
「灰原様の言動は、我々の有する情報に関して直接的に守秘義務に触れてこそいないものの、
裏世界や神秘を認識していない人にもそれを勘繰らせる可能性の高いものが含まれます」

「……お気づきでなかったようですが、
視力が10を上回る人間は基本的に計測データ上、存在しないのですよ?」
……彼女の言うことは、もっともで、真っ当で、正しく、道理的だと思った。
だから、困った。自分に常識が欠けていることは、自分が一番よくわかっている。
だから、非常に困ることを言われている、と思った。

わからないものをわからないままに修正はできない。
そして、僕は、自分が今何がわからないのか、わからない。
一般教養を教えてくれた、つてはあるけど。それでも、全ての無知を知っているわけじゃない。
……難しい。
ただ生きていくだけなら、「わからない」は改善ができる。
でも、「わからない」ゆえの過ちを避けようと思うと、必然的に会話は制限される。
常識って、一朝一夕で身に着くものじゃあないだろう。きっと。

「………………」

「灰原様がこれまでどのような環境に身を置かれていて」
「その結果、何が不足しているか、我々は情報を請求する権利を持ちません」

「ですが」
───どうかお気をつけください、と彼女は告げた。
不安や不足があるのなら、訳を知るご学友を増やし、頼れと。

「あまりこうした表現を用いたくはありませんが」
「もし、あなたの言動が看過できないものとなった時、まず与える処分は」

