RECORD

Eno.327 六角 しよりの記録

サンの噂話

「ねぇ、知ってる?美術室の透明先生の噂。
誰もいない教室で彫刻刀が動いていたら、先生が作品を作ってるんだって。
ちゃんと褒めなきゃダメだよ。褒めなかったら彫刻刀で作品にされちゃうって。」



「なんでかって?誰しも褒めてほしいでしょう?嬉しいから。
ひとりで放課後、彫刻刀を動かして作ってるんだもん。
ただの木の塊から命が吹き込まれていく。できた作品は我が子同然だろうね。
だから褒められたいんだよ。見て感想を言って欲しいんだ」



だから、もし、感想も言わず、その場を去ったりしたら?

「次の日その子がこなくなるんだ。なんでだろうね?
美術室には先生が作った作品が増えてる。誰もそのことは言わない。
いなくなったあの子そっくりそのままなのにね」



「作品にいたずらしたあの子は今日はいないね。なんでだろう?そもそもそんな子いたかな?」



「……だから、褒めなきゃダメだよ。次の作品にならないように、ね」


「先生がきみを彫り始める前に」





「なんて、離す相手はいないのに。広めてくれる友達はいないのに」


烏が鳴いている。
烏が鳴いたらー……。