RECORD

Eno.268 飯屋 彩禍の記録

『日常の中で』

私っていつ頃から居たのかな?
―そういう記憶はない。

先輩ってどのくらい昔からいたんですか?
―前々から居た、という事になっている。

緑色だった髪を染めて目立たなくした上で、
私は人間だと言う事になっている。
郷に入っては郷に従えという。
人の中で生きる事は慣れている。今更なんとも思わない。
だが、私は変わらない中で時は動き続ける。
長い時が過ぎれば必ず違和が出てきてしまう。
だから、過ぎてはいけないのだ。たったそれだけのことにあるが、
その制約は存外に大きいし苦しい。
当然の報いではあるものの。

―神秘は現実と密接であってはならない。
ただ、それだけのこと。

「おはようございまーす。」
この挨拶が、私を日常へと固定する。
その合図だ。それ以上でも、
それ以下でもない。

自身がこの世界では■■に属するものであるという事は忘れてはいけない。
それを失えば私は在るべき所へは戻れなくなるだろう。

―生きると言う事はつらいな。
 あの時、死を選ぼうとしたのはそういうことか。
 だが、それが分かってもみすみす見逃すわけにはいかない。
 同じ血を分かち合っているのだから。
 
必ず答えを見つけてみせる。この日常の中で。

「己で己に呪いをかけておきながら……都合が良すぎませんか?」


「あの時はああするしかなかった!」


「そうですね。私だけじゃないですから。」



―何が正しいのかなんて分からない。
そうだとしても、私は私以外にはなれないんだ。