RECORD

Eno.102 不明門通 辰巳の記録

【日記01】兄貴の話




たぶん始まりは2歳くらいの話。
イヤ自信無いなって来たな……3歳くらいかもしれん。
俺に兄貴が居た頃の話。



「兄貴って言うてもイトコのショウ兄のことやないで。
 ちゃうねん。俺もう一人・・・・兄貴おんねん」


「オ~~~イ何やねんその信じてへん顔はァ。
 ホンマの話やで?」


「……人間、物心がつくのってさ。
 2歳半とか、3歳くらいからって話やんか」


「えーと、だからァ……いくつやろ、ちょい待ち。
 2~3歳から7歳までやろ……?
 単純計算で5年ってトコかいな」


「せやからその……数年分しか無いねんけど。
 兄貴との思い出が。……エッ? 少なっ


「ええっ!? 思い出うっす!!
 なんやねんその高級料亭の湯葉みたいな薄さ!!
 そんな短いん!? ちょ……予想外やわ!!
 スマンこれあんま膨らませられる話ちゃうかも!!」


「思いっきり脱線してもた。堪忍な。
 兄貴の話ね」


「言うて俺も当初まだバブバブの赤ん坊やったしな。
 しっかりした記憶は小学校一年生くらいまでしかあらへん。
 そないに詳しく覚えてるワケやないけど……」


「でもおったんよ。間違いなく俺には兄貴が居る。
 生まれた時からずーっとな。今もちゃんとおるよ」


「……随分と前から会えへんけどね。
 諸事情あんねん人間には」




7歳の時に、兄貴と別れて北摩テクノポリスに越して来た。
そっからもう8年くらい経ってんねん。今15歳やね。
兄貴との思い出がたったの数年分。




「齢十五のガキが何ほざいてんねんって言われたら
 そらぐうの音も出ぇへんよ。それは分かってる」


「でも俺、人生でいっちゃん楽しかったのが
 いつ頃って聞かれたら……」






多分、きっとそれは間違いなく。この5年間なんよな。











───朝焼けと夕焼けを繰り返す世界は、さぞや眩しいに違いない。
そういう世界に兄が追いやられている事を考えるたび、日差しを傘で隠したくなる。