RECORD

Eno.706 如月 静空の記録

4_記憶の反芻

 私の世界では夢を見る事が出来ない
 原理は未だ、科学的に解明されていない

しかし、その理由に関するこんな逸話はある
 平成31年、世界は“悪夢”と呼ばれる存在による混乱や事件が増え
 それと同時期に後に魔法少女と呼ばれる少女戦士、“天使”も現れた

 天使の魔法は、天から授けられた力として“GIFT”と呼ばれていた
 本来は形の存在しない魔力を、想いにより具現化する力
 ある者は蒼い炎のガンブレイド、ある者は水晶の長杖
 想う事や夢見る事が“魔法”の源であると天使は信じてた

 そんな天使は悪夢と戦い、平和を取り戻すべく活動していた

 しかし、ある一人の優秀な天使──水晶の天使が、
 悪夢に仲間を殺された事により壊れてしまった
 これまで悪夢は天使を殺さなかったそうだった

 天使の魔法GIFTの源である“夢”は悪夢にもなりうるもの

 だから、みんな水晶の天使を止めた。助けようとした
 けれど彼女は止められなかった

 悪夢を殺して回り、復讐に全てを捧げた
 悪夢を殺せるのは水晶の天使、ただ一人だった

 変身解除後は最悪感に苛まれ、変身後は復讐心に囚われて
 天から授けられた“GIFT”に蝕まれ、彼女は徐々に狂って行った

 天使も徐々に戦死して
 最後に残ったのは、水晶の天使と蒼炎の天使だった

 最後に水晶の天使が、仲間の仇の悪夢を殺した瞬間
 彼女に黒い翼が現れた

 水晶の天使は、悪夢になった

 蒼炎の天使が彼女を無力化させても尚
 天使だったモノの力が止まることは無かった

 だから封印した

 持てる力全てを使った
 夢見る力を魔法に変えて、みんなを救おうとした

 ──激闘の末、最大の悪夢を封じ込める事には成功した

 しかし、その代償は大きかった
 蒼炎の天使は、夢も魔力も、殆どの力を使い果たした

 最悪の事態は回避できたが、ただそれだけだった

 人々は夢を見る事が出来なくなり
 生き残りである蒼炎の天使を崇め、救いを求めた

 確かに魔法は後世にもあるし、蒼炎の天使の後日談もある
 信じがたいが、これが私の故郷の真実なのだろう


 ここからが本題だ

 どうやら、異なる世界だとその理は効かないようだ
 と言っても、一般的に語られる非現実的な夢と言うよりかは
 幼き頃や直近に見聞きした記憶の反芻が大半である

 けれど、私は、
 時々『身に覚えの無い、妙に生々しい夢』を見る事があった

 その夢は、どれも最後は私の死で終わった

 最初にその夢を見たのは高二の春で、
 成人して旅を始めてからはさらによく見るようになっていた

 死が近付く感覚がする度に怖くなる
 血が引ける 視界が沈む
 夢なのか現実なのか、境界線すらわからなくなる

 どっちだとしても死ぬのは嫌で
 これが夢だと気付く度に私の心は安堵で満ちた

 昔、この事をお姉ちゃんに相談したら
「しぃちゃんは慎重だから、
 良くない出来事のシミュレーションをしてるのかもね」

 と、言われ、それがちょっとした救いになった

 そうであって欲しかった
 そうであると信じ続けてた
 だから、これからもそういうことにしてただろう



 ここに来た時に、変わり果てた黒江くんが語った
 私が怪奇に攫われて死んでしまった記憶
 初めて見た悪夢の景色と同じでなければ